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16、大山脈ペルトル

 バイクをアルトスの東へ駆けて約二時間、丘陵地の終わりに、俺は緑に敷いた山脈を見た、その綿延たる山は地平の彼方へと緩やかに起伏し、やがて地平を覆った、まるでファンタジノーベルに書いた風景、如何にも人類を疎遠する種族が住まう場所だ。


 大山脈ペルトル、これか其の名、聖王国アルマックスに亘る大山脈の一つ。


 ここに来た原因?それを語るには時を昨夜へと遡らなければなりません。


 「金貨五万枚…ですか?」


 この金額を聞いて、館の主である少年端正の顔も顰めた。


 「はい、この剣を修復するには【真なる銀】と【不屈なる銅】が必要、加工し難い鉱物なので、手慣れの匠人も不可欠、採掘の難易度を加え、既に最小限に抑えたと思います。」


 俺達が長テーブルの側に晩餐を楽しむ時、主座に座る少年が話を進めた、正直王族に対するマナーや話し方など俺には分からない、だから主にアイリーが対応する、俺は黙々と食事を進める。


 「ミスリルとアダマンチウムか、確かにそれぐらいの金額が必要ですね。」


 納得するように、少年は頷く。


 「けどその半分が先払い、取り逃がしをしない保証はありますかね?」


 横槍を入れたのは少年の側に佇む優雅な髭を蓄える初老の人、服装から見れば執事のようだか、その引き締まった体つきや冷徹の表情から武人の面影を見える。


 「ロベルス…だから…」


 気不味い状況を避ける為少年は頑張った。


 「保証はありません、信じるか否かは全て貴公らに任せる。」


 一片の動揺も見せないアイリーであった。ちなみに前払いを提出したのは俺、一応行商人の身だし、なら商人らしい振りをしよう。


 「ではロベルスの同行をお願いできますか。」


 少年は折衷案を提出する、元々そうなる事に考えたから、拒絶する必要がない、か、それなりの警告が必要だ。


 「鉱物の採掘には多大の危険が伴います、だから命の保証は出来ませぬ、もしそれでも良いのなら、付いてきても構いません。」


 確かに俺は復活の魔法を使える、だか他人の為に濫用はしない、人の生死を阻むなど、俺はそれほど神様気取りではありません。


 「分かりました、そこは自己責任で宜しいですね。」


 どうやらロベルスって人は少年から厚い信頼を得ている。


 晩餐の後、アイリーは先に部屋に戻り就寝の準備をする、俺は食後の散歩時、屋外の花園で折よく少年に出会った、そして俺は問う、何故人混みの中に俺達を定めたっと。


 「なんとなく、かな、あの子は人混みの中でも光が冴えないから。」


 勘か、それとも称号か、もしかしたらアイリーも同じ事を見えたかも。


 っと言うわけで、アイリーの情報により、俺達は大山脈ペルトルの麓に来ました、本人によると、小さいころこの辺りの小国がよくその様な希少鉱物を進貢するらしい、今んどこ全部聖王国アルマックスによって統一されましたか、鉱産の豊富さは変わらないだろう。


 意外な事に、採掘場の入り口にあったのは国の管理機構ではなく冒険者ギルトでした、入場者の登録や入場料金を取る以外、換金所での鉱石売買もしておる、ギルトより何でも屋に近いな。でも考えた通り、アダマンチウムとミスリルの在庫はゼロだ。


 在籍冒険者の資料は何らかの通信手段によって各冒険者ギルトに共有しているので、入場手続きは結構簡単に済ませた。順路を沿って山を登たら人気スポットの展望台に、そこ抜ければ採掘場のある針葉樹林に辿り着く。


 沸き立つ人声は採掘者の多さを示していますか、機械的な採掘設備は見当たらない、この世界の技術力を考えればさほど困難な物ではないか、なぜだろう。


 「機械?あ、ドワーフやノームが使うあれか、国が禁じされたんだよ、どうも操作の精度が足りなくてな、この一帯の鉱産は豊富だ、レア物のアダマンタイトやミスリル以外、晶原石の鉱坑もある、万が一不当操作によって魔力が暴走したら元も子もないんだぞ。」


 ロベルスがそう答える。監視役として同行するロベルスは昨日のスーツ姿を反し、軽やかで丈夫そうな皮鎧を装備した、鋭い目付きは空気をビリビリして近寄り辛い。


 約40センチの短剣と装飾を省けた拳銃が彼の武装、どれも腰間に帯び、牽制と速度を重視した戦闘スタイルを表す。


 晶原石、それは未加工の魔晶石の事、純度は低いかそれなりの魔力を帯びている、状態が不安定な為、外部の衝撃によって爆発する事も時々有るそうだ。っとアイリーが頭の上にハテナマークが浮いた俺に説明する。


 「本当に主従関係なのかお前ら。」


 ロベルスの皮肉に俺はトホホっと誤魔化した。


 ペルトルは長さ60キロ、幅15キロもある大山脈、鉱脈は集中ではなくあちこちに点在している、だから効率よく採掘するため、俺達は手慣れた者を数人雇し、手分けして各採掘場に向かう――アイリーと雇った者達は中心部の鉱坑、俺とロベルスは東の断崖と渓谷へと。何故ならアダマンチウムの原石であるアダマンタイトは天然の鉱石ではなくある種の怪物から剥き取った物、単純の採掘より危険性が高い。


 雇った者達は確かに荒くれ者ばかりですか、怪物に立ち向かう勇気のある奴はいない。


 アイリーに手を出す?ご冗談を、レベル5や7の奴が幾ら居てもアイリー大剣に敵わない、ただ無駄死するだけだ。因みに先払いした金貨は俺が持つため、ロベルスは俺を噛み付いた、監視役として戦闘力を期待しない方がいいかも。


 針葉樹林に入った途端、敵性体を表す赤い点は視界右上のマップ画面に幾つ現れた、なるほど、冒険者ギルトを任せる訳だ、収入があり、怪物退治も出来る、加えて軍資金も省ける、正に一石三鳥、冒険者と言う職も悲しいものだな。


 出発地点から歩いて約一時間半、俺は断崖に辿る、地図から見れば凡そ7キロだが、生憎自分は肥満体で、道の後半は既に汗をかき、足を引きつって歩くのみ、幸い山地の起伏は緩い、そして針葉樹林の湿度もそう高くはない為、何度なく凌いた、今度の事件を終えたら静かな場所を探して一応正常の生活に戻ろ。


 けどロベルスも流石に強い、途中で襲いかかった火蜥蜴達を拳銃一発で仕留めた、これもまだ好都合、俺も何匹の火蜥蜴を殺したが、レベル10以下の雑魚ばかりなので、数は覚えていない、ロベルスがその強さなら俺の戦闘力を変たと思わないでしょう。


 唐突に、断崖の下から甲高い咆哮が伝来し、俺の鼓膜を震撼する。


 「竜吼 を 抵抗した」


 ダイアログボックスに文字が現れる。


 かなりの高度が有る為に威力は減っていたのですか、あの振動する喉声ははっきり聞こえる。


 「竜吼の前にびくともしないとは…用意が周到の様だな。」


 ロベルスが少々驚いだ口調で述べる、どうやら咆吼の主こそか今回の狙いだ。


 「名前:ソルレオ、種族:下位種ドラゴン、天賦スキル:鉱石消化、高音竜吼。」


 久しぶりの天賦持ちか、やっぱり天賦を持つ者は少ないな、人間も怪物も。


 「あっちの階段を降りれば渓谷地帯だ、ターゲットはそこにある。」


 一緒に行かなくではっとロベルスに問いましたか。


 「大丈夫だ、もしお前が死んだら、私が責任を持って金を取り返す。」


 つっか俺はもう死ぬ確定?


 無理もないな、なんせレベル1だから。


 俺は空間魔法を駆使して浮いた足場を作り、相対座標を足に固定した、根源魔法の重力操作も加えれば、どんな地形でも滑るように前進するはず、まぁ事実上にこの長くで古い階段を降りる時かなり楽でした、ロベルスが後ろに付けなくでよがったな。


 凡そ千米の垂直断崖を降りたら目標の側、なぜなら元形が見えない臓器や骸骨などか散りばめている、か、全部乾燥していた為、屍臭とかはあんまりない。体感的に言えば、湿度は高くはない、むしろ爽やかな水気を感じる、如何にも渓谷だ、だから屍骸はそう簡単に乾燥する訳ではない、つまり誰かの仕業ね。


 っと考える内に、地を揺るがす足音を聞こえた――渓流の向こう側に、この一帯の覇者が歩いてきた。鳥に似たような四本の趾と筋肉質で強い足が五メートル近くの巨体を支えた、全身の皮膚が岩石のような紋様が走り、頑丈さと柔軟性を併せ持つ、同じく筋肉質で目測八メートルの身長より長い尾の先端に骨色の棘が生じ、遠心力を加えれば仇なすものを一撃粉砕する威力があるに違いない、巨体の両側には大いなる角質の翼、相対的に小さな手は翼と連なり、骨ともが太いので飛行には不向きでしょう。


 三角形の頭部にも頑丈で柔軟の皮膚が覆う、口は巨体に反し相対的に小さめだが、鳥の喙の様な角がある、頭部の後方には扇型のフリルがある、体相応に発達しておる、そのフリルの縁側も数本の骨質角が生える。絵面的には角竜種の恐竜に似っていますか、あの翼があったこそのドラゴンかも知れない。


 特筆すべきのは頭部の先端、角竜種恐竜特徴である複数の骨質角はない、あったのは槍の様に高く聳える一本角のみ、その角は皮膚や骨と違い、岩石質である、そしてその岩石の間隙から真紅なる金属光沢が見える、当たりだな。と思ったが、体から発した異様の高熱は周辺の光線を歪め、蜃気楼に彷彿する、目を凝らして見れば、砂漠色の皮膚に数え切れない血痕があり、黒ずむ内臓や肉の残滓もある、それに病的に赤く光る目、立ち向かうには死の覚悟が必要訳だ。


 理性的な分析がまだ止まない内に、二回目の竜吼は空気を震わせた、どうやら位置はもうバレたね、無駄に勘がいいなこいつ。


 竜吼で高ぶる頭を下げ、全身を後ろに引込み、強敵「ソルレオ」が放つ矢の如し突進して来た。俺は余裕で躱す事が出来ると思ったか、その突進は途中で方向を微調整出来るらしい、つまり微々たる追尾性能を備えている、お陰てこっちも方向を大幅に調整した。


 調整が終了後、体よりでかい角が面前に迫った間一髪の時、俺は躱す。


 轟音、煙塵、揺るがす断崖の岩壁、そう、俺は奴を誘導して断崖にぶつかった。


 しかし流石にドラゴン、これだけの質量衝突があったのに、ライフゲージはびくともしない。ちなみにソルレオのHPは45000、ワイバーンよりちょっと上、まぁ、体型から考えれば納得する。ならなぜ迫り来るドラゴンに俺はその様な危険の挙動をするの?


 考えられる理由は幾つもある――派手なスキルがないため華やかなに勝ちたい、昔ゲームで似たようなモンスターは飽きるほど狩ったので刺激を求めたい、とか。


 けどどの理由も合理性を欠けている、最後は「俺は恐怖心を失くした」に帰結するしかない。これは感情の欠落なのか?現時点の俺はでまだ喜怒哀楽が感じる、そして人としての欲がある、なら欠落ではないな。


 話を戻そう、ソルレオは頭に落ちた石屑を振り落とし、再び角を俺に向けた。極めて単純の攻撃ですか、質量も角度も速度も有る故破壊力は絶大。


 「っと言いたいどころだが、余興はここまでにしよう。」


 突進を準備中のソルレオに、俺は状態魔法の「即死」を放たれた、乱数が決めた一瞬、突進の姿勢を保持したまま、ソルレオと言う名の一角竜は呆気無く地に崩れた。そう、どんなエフェクトもないから、派手さの欠けるこのスキルはあんまり使いたくない。


 「ソルレオの主食は肉ですか、エネルギー補充の為鉱石も食う、内なる心臓から発した高熱を通して鉱石を消化する、消化できない分は特殊構造の魔力回路を経由して頭の角に集積し、様々な特殊鉱石に形成。アダマンタイトは雑質のない銅、その純度は魔力によって保てる、それを生成するソルレオは休む無く魔力を供給しなくではなりません、だから常に精神衰弱状態に陥り、暴力を振る舞う。」


 鑑定を使い、オプションから「生態」を選択すれば、ログウィンドウからこう言ったな情報を表示した、案外不憫な生き物だな。


 「称号:一角竜殺し を 獲得した」


 一々馴染まないねこのメーセージ。


 ふざけた戦闘は只の十数分で結果を出した、残された問題はどうやってアダマンタイトの角を剥ぎ取るかだ、純度を保つ為に魔力を必要ですからやっぱり魔力供給の出来る容器が必要なのかな。


 「いつまで隠すつもりだ?もう安全だぞ。」


 一角竜を表示する大きな赤い点を消した後、マップ画面にはまだ非敵性体を表示する青い光点が有る、つまり誰かが近くに居る訳、だから俺は呼びかけだ。


 「本当に倒しだ…凄い…」


 渓流向こうの灌木から三人組が出た、筋肉隆々の剣士にすばしっこい弓使い、後は古びた杖を構える女子、バランスを取った典型的な冒険者グループだ、けど装備は結構粗雑に見える、まぁ俺の装備も大概同じだけどね。


 「なぁに、運良く即死の魔法が効いてるだけだ。」


 観客には嘘が通し難い、敢えて事実を言お。


 「突然ですが、このアダマンタイトの角はどうやって剥ぎ取るの?」


 「ギルトが配ったガイドブックを読んでいないの、直接に剥ぎ取ればいいって書いてあるよ。」


 訝しむ顔をして、杖を構える女子は答える。

 あ本当だ、「アダマンタイト自身は既に一定量の魔力を蓄積しておる、その純度を三四日間保つ事は可能」っと書いてる、なら安心だ。


 採取出来る他の戦利品を報酬として、三人組は俺の為にソルレオを解体した、昔田舎の実家に居た時、鶏や豚などの解体と下処理をした経験はありますか、可能ならばやりたくないな、古来の諺はあるでしょう、「君子は庖厨を遠ざく」っとか。


 「はい、これが約束の角です、心臓は本当に要らないのか?」


 剣士から白い布を包んたアダマンタイト角を受け取り、俺は頷く。「一角竜の脈打つ心臓」、ドラゴンの心臓として、本体が死んで尚脈打ち続ける異様な臓器、聞いたどころ、学者や匠人から大変重宝されてるから、その相場もかなり高騰していた。


 「解体作業を手伝うだけで金貨一万確定とはな…取り敢えず感謝する。」


 下手にすりゃ精錬されたアダマンチウムより高いぞこりゃ、心苦しいが約束は約束だ。


 「…君に過小評価したな。」


 少ない言葉ですか、階段上りの俺を見たロベルスの顔に驚かしさは隠せない、さって事を済んだし、アイリーと合流しよう。


 順路を沿って一時間ちょっとを経ち、俺達は採掘場の入り口に戻った、そこに大剣を地に刺したアイリーが居る、彼女はドレスの裾を抓て俺に軽く礼をした。


 「お待ちしておりましたご主人さま。」


 けど俺の目は彼女に留まらながった、採掘場に入った時俺が雇った数人の採掘者は二人しか見えながった、しかも体のあちこちに欠損して血まみれだった、生きるのが不思議位。


 「そうか…ギロガリタと遭遇したのか、運の悪い奴らだ。」


 知ったような口でロベルスは述べる。


 「はい、残念な事に、でもミスリルはちゃんと確保した、それはご心配なく。」


 確かに他人事ですか、でも負傷者にガン無視とは些かに冷たいな。


 「荒稼業だから、もう心の準備をしていたでしょう、それに目当ての金も入っただろう。」


 「はい、死者の慰謝料も込めて。」


 事実に反論しても無駄だったのか。


 「ヒール。」俺は黙々と回復魔法を唱えた、体の欠損故に彼等は元の上限まで回復する事は出来ないか、出血は止まり、表情も少し柔らかくなってきた。


 「お優しいですね。」


 アイリーは俺の側に縋り付く。


 優しい?違うな、これは神に気取らない自制心と人間性の矛盾から生じた独善と甘さだ、どうやら俺はまだ人間の心を失いていないな。


先月は有休の為遅らせた、すみません

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