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11、自由都市フォーラン・三日目(イラスト追加)

 「ああ…間違いなく本物だ…」


 ルーファスとモーヴァン、手中に収める水晶花を見て、驚愕、不信、疑惑、そしてある程度の放心を交わった複雑の表情をしている。


 俺は「高位冒険者達を便乗して第六階層を抑えた後、とある冒険者に高額で水晶花を買収した」っと言うシナリオを作り、詐術全開で顛末を説明したが、どうも二人がまだ半信半疑、少なくとも後の進展に支障が生む兆しはない。


 「取引はこれにて終了、もし別の用件がないなら俺はフォーランに戻りたいが。」


 俺は故意に二人を促す。


 「あ…貴方は好意である事を確かめた、私の権限により独自の調査行動は認める。」


 ルーファスは水晶花を懐中に納め、俺に手を伸ばす。


 「あ、もしまだ何か情報が入ったら別途で王家騎士団へ通達する、よろしくたのむ。」


 ルーファスの握手に俺は応じた。


 「今回ばかりに迷惑掛けだな、貴方もモーヴァン殿も。」


 「いいでもんよ、俺武人だし、そんなもん気にしないさ。」


 モーヴァンもまだ笑う。


 二人を背にして、バイクを駆けて約30分、俺は宿に帰った。


 「あ、お帰りなさいませマスター。」


 布団で下半身を遮てベッドに座る少女は、門を開いたばかりの俺に挨拶をする。上手く整理した波のような青い長髪に少し施したアイシャドウ、まだ10才にしか見えない幼い外見なのに一段と古風美人に見える。


 「ただいま、体の具合は?」


 ローブに覆うマントを部屋隅の椅子に掛け、俺は尋ねる。


 「ええ、血行も大部良くなって来た、久しぶりの肉身ですが、支障なく動く事ができると思う。」


 布団を開いて、綺麗な生足を晒す彼女はベッドから降りた。


 「はい、このように、大丈夫だと思います。」


 「くれぐれも無理をしないように、それにいつも裸足のもあれだし、一応サンダルを買ってきた、旧時代の靴に似って着心地も然程変わらないだろう、安物だけどね。」


 「いいえ、マスターが賜りし物でしたら、アイリー、喜んで承ります。」


 「あとその献身的な口調を変えて欲しい、目たつから。」


 「契によって、アイリーはマスターの命が尽くまでお仕えしますので、正確な上下関係を持たないといけない、だからダメ。」


 うわ、幸福に満ちた笑顔だ、もし本当にヤンデレなら、献身的ほど裏切りによっての反動も大き、ロリコンの俺は正直考えたくないな。


 アイリー・ノブリエル、それが彼女――既に滅び去った神王国ノブリエル第四王女の名だ。王女であると同時に神を仕える巫女でもある、幾星霜の孤独を経った彼女は、今俺の侍女に成った、俺は一応正確な自己認識を持ってるつもりだ、けど彼女は余程盲目らしい。


 「悪いなアイリー、このかっこよくないデブのおっさんの侍女に成りて。」


 「滅相もこざいません、アイリーにとってマスターを仕える事は無二の喜びなのです。」


 俺の自嘲に答えるのならともかく、微笑ながらその薄紅になる頬はなんなんだ。


 夜伽なら大歓迎ですか、そのヤンデレ気質に善処しないといけないね。


 「…そう言えばアイリーって裁縫できるのかな?」


 出来事の処理をしなければいけないのだが、アイリーが付いて来る気満々だ。


 「はい、少々。」


 「王女なのに偉いね。」


 「いいえ、四つ目の娘なのでそれほど優遇されていないため、身嗜みとして学んだだけ、家事も対応てきますので、マスター御心配なく。」


 「ならキトンとヴェールの形を変えさせてもらう、こっちに設計図がある、これだと目立たなくなるでしょう。」


 アイリーに手渡したのはカチューシャとメイド服の図様、やっぱり侍女の定番がこうではないと。


 「はい、畏まりました、では少々お待ちを。」


 快く作業を開始するアイリー、もしヤンデレ気質の疑惑が無ければ、素直でいい子だな。


 門外に待って約10分、扉開く度に、簡素でふんわりしたメイド服を着た幼っ子が俺の前に立っていた。


 「ふわふわする、あんまり慣れでいないが、これでよいのですかマスター?」


挿絵(By みてみん)


 キトンとヴェールが元々上質なシルクによって作られた物なので、例え簡素な設計でも、その漂う気品は冴えない、寧ろ元王女の高貴さを強調している。


 「んん、やっぱり俺の目は狂っていない。」


 アイリーの髪を撫でて心から賛美する。


 「ご褒美預かり光栄です。」


 嬉しそうなアイリーであった。


 エインスハイム地区にあるアフラティス修道院に訪ねったのは朝の11時半、ちょっと朝礼が終わった頃、数多く信者と修道者の群れに潜り、俺とアイリーは無事礼拝堂に辿り着ける、折よくも祈祷中のレイフィを見付けた。直接レイフィに問いかけるのは流石に不味い、俺は最後に離れた修道女達の行き先に回り込み、偶然出会った様に演じる。


 「あ、すいません。」


 とある修道女を軽くぶつかり、機に乗じ話を開くつもりだった。


 「あら、貴方様は確か…シスター・レイフィを護送してくれた方ですね。」


 けどシスター達を率いる女性は俺が訊ねる前に会話の口を開けた。


 「初めまして、あたしはサーシェー、この修道院を仕切る院長です、以後見知り置きを。」


 微笑みながら挨拶してくるのはモノクロな修道服を着た清楚な女性、35歳の俺からすると、彼女は約3~5歳下に見える、修道院の院長としては適格な熟年だ。


 「初めまして。」


 軽く礼を返し、俺は何気なくレイフィの現状を刺す。


 「見だ所、レイフィも無事修行を進めているらしいですね、これでセフィリアも一安心だろう。」


 「確かに、シスター・レイフィが此処に来る目的は修行だとシスター・セフィリアから聞いています、具体はどんな修行をするのかは聞いてません、シスター・レイフィはあたしの管轄範囲に属さないし、何事も無ければいいのだか。」


 頬を撫で、サーシェーはちょっと困るに見える、少なくとも嘘ではない様だ。


 「では院長、あたし達はこれで。」


 会話を邪魔しない様に、空気を読めた修道女達は別れを告げ、回廊を空けた。


 「しかし特許商人も珍しいですね、教団が経営特許を下すのは滅多にないから。」


 なるほど、これが詔文の内容だな、良くも悪くも無い中庸な解決法だ。


 「ハァハァハァ、この依頼は断り難い、こちらにも色々事情が有りますからね。」


 敢えて聖都での出来事を伏す、彼女の地位を知らない以上、余計な事を漏れない方が良い。

 

 「ふふふ~、分かっております。」


 会話の終了を促す様に、12時の鐘音はここで響く。


 「では、どうぞご自由に、あたしはこれで失礼致します。」


 名残なく、彼女は去っていた。


 「さって、昼飯でもしよう。」


 俺は腰を伸ばして呟く。


 「え?」


 逆に驚いたのはアイリーでした。


 「調査は本当にこれで良いのですか?」


 「いいから、それにアイリーも色々疑問が有るでしょう。」


 大敵のサイフィス教会修道院に入り、アイリーは沈黙を徹した、侍女らしく微笑みながら俺の側に佇み、感情の波動すら他人に見せない、10才の幼女が持つ心とは思えない。


 「それもそうですが…」


 自由すぎる故、フォーランの昼はいつも遅い、正午とは言え、ちゃんと店を構えているのはカフェくらいだ。カフェ「ヘレン」、観光指南によればエインスハイム地区一番人気な店、藍と白が主色になったこの店は過剰な装飾がないが、特製の硝子で陽の光を柔らかくにしてのんびりした雰囲気はオレ好み、特にエッグタルトが有名らしい。


 「なにこれ!パリパリした生地、風味豊かでふわとろの中身、こんなもん食べた事はないよ!」


 最初、店の内装にちょっと文句があるアイリーだか、看板メニューのエッグタルトを食べたらもうすっかり虜になり、子供らしい笑顔を見せた。


 「んん、確かに。」


 アイリーの評価通り、卵を惜しまなく使った故の風味でしょう、それとも別の幻想生物の卵を使ったのかな、とにかく美味い。


 「ね、マスター…先の建物って、もしかして…」


 ミルクたっぷり入ったカフェオレを飲み干し、アイリーは話を巻き戻る。


 「ああ、サイフィス神が祀れる教会。」


 俺がオーダーした飲み物は「ビカ」、飲んだ処、炭焼き風味のエスプレッソに似ている。


 「アイリーの気持ちは分からなくもないが、俺にもやらなければいけない事があるさ。」


 「気持ち…ですか…」


 少しの沈黙を経ち、アイリーは言葉を搾り出す。


 「正直時間が経ち過ぎで、妾自身も分からなくなった…」


 まだあの子供らしくない苦笑いだ。


 「確かサイフィス神は妾の祖国を滅びました、けど神様に向かって文句を言うのもどう仕様も無い事ですね、だから復讐なんで妾はもう諦めました。」


 続いて、アイリーは気を取り直す様に小さな頭を振りながら言う。


 「マスターは時の牢獄からあたしを解放してくれた、だからアイリーはこれからマスターを仕える一心です、どうぞ御心配なく。」


 気持ちは嬉しいですが、あんまり自分の心を削れないでください。


 「心、ですか…」


 今回はなんだか意味深な笑顔だ。


 「こう見えても元々三十路を越えた女ですから、割り切れると思います。」


 俺と同い年、否、もしくは俺より年上か、時の牢獄ってロリコン天国の二つ名だな。


 「それはそれどして。」


 空いたカップを机上に軽く置いて、アイリーはいつの間にか自分を抱き着きながら髪とほっぺを擦り擦りする者に指して言う。


 「このやけに情熱的なブラッディエルフの方はどなた様でしょうか。」


 「きゃ~~~なにこの子メチャクチャ可愛いよ!しかもすべすべ!」


 この傍若無人の言動をするのはやはり我らのライエ嬢、今回は大人ヴァージョン。


 「姫様!」


 美青年ロシェからの怒鳴り声。


 「まだ人に迷惑するような事を!」


 「え~~~ロシェのケチ!」


 アイリーから離れる最中でも喚くライエでした。


 「あ、カフェオレとエッグタルト三つをください!」


 そして勝手に人の隣に座って勝手に注文したよこの人。


 「ロシェは外で待って、この人が居れば安全ですから。」


 「まだ下らない人間と会話ですか…」


 ロシェは店内を一瞥をし、深い溜息をした。


 「御叔父様の仰る通り、姫様もそろそろ自分の立場を理解する頃だな。」


 「いつも叔父様叔父様ばっかり…」


 ロシェの後ろ姿を見て、ライエも溜息をした。


 「あたしだって辛いのに…」


 これだけの茶番で店内のお客さん達が嚇さないのは、俺がアイリーに頼んで音声隔絶の魔法を掛けた故、たしかスキル名は「サイレンスヴォイス」を言う。


 「そう言えば、自己紹介はまだですね、ライエ・ロシュフェルデよ、以後よろしく、ってか行商人さんはもう知ってるよね、こちらの可愛いお嬢ちゃんは?」


 いや、全名なんで初耳だぞ。


 「アイリー・ノブリエルと申します、マスターの侍女です、以後見知り置きを。」


 アイリーは立ち上がり、ドレスの裾を摘みながら礼儀正しく礼をした。


 「ノブリエル?いや、そんなまさか。」


 ライエはなんか思いついた様に見えるが、自分でそんな事を振り切った。


 「しかし行商人さんも流石というべきかな、こうも早く幼いメイドを招いたと、正直意外。」


 「ハァ…お前本当に今の状況を理解しているのか…」


 ライエあんまりの能天気ぶりに呆れる俺は一刻も早く話の中心を切り替えたい。


 「こう見えても忙し身なんだ、無駄話に付き合う暇なんでないぞ。」


 「分かりましたよ…せっかく美人が話を掛けたのに、風流のない人ですね。」


 美人である事に異見はないが、自画自賛はどうかと思う。


 「先ずあたしの身分から説明しよう、あたしは現在この国のブラッディエルフを仕切るロシュフェルデ家当主――アレイゾ・ロシュフェルデの娘、以前話した事はないか、貴方は薄々気付いたでしょう。」


 そりゃもう姫様呼ばわりからね。


 「出来れば貴方達をこの事件から遠ざけるつもりでした、けど今朝アフラティス修道院に行った事を知り、どうやら無理だったようね。」


 俺の黙認を確かめ、ライエは話を続く。


 「この国は今変革の真最中なのよ、リンティスへの技術依頼から抜きたい故、若き獅子は異族と手を取り合い魔科学の発展を図る、サイフィス教は快く思わないでしょう。」


 なるほど、一番厄介な事態だな。


 「それにブラッディエルフ自身も一枚岩ではない、改革派のあたし達と違って古くからの掟を守りたい保守派もいる、父さんはあたしを女王の座に継ぎたいのだか、政治闘争はどうしてもあたしの性に合わなくて、だから古き遺産の解明を名目に何度も逃げ出しちゃった。」


 彼女は笑顔のままだが、俺から見れば自嘲でしかない。


 「身を滅ぼす危険である事を知り、死に急がなければ、なぜ貴女はこの国に戻るの?」


 コップを唇から逸し、アイリーは冷たい声で事を述べる。


 「あたしちょっとバカだし、だからあんまり深く考えていないさ、ただ同族…いや、家族や友人が危機に瀕した時、やっぱ逃げたくはない。」


 一見なんの変哲もない話ですが、何気に強い芯が感じられる。


 「なるほど、一応民の上に立つ者としての覚悟があったようですね。」


 アイリーも笑った、けどその笑顔は好意より我が身を哀れむに見える。


 「マスター、この件に関して、妾の見解を述べでもよいだろうか。」


 俺の頷きを承り、アイリーは話を続く。


 「リンティスへの技術依頼を脱したいのは、この国が自分の国力及び技術力を基づいた認識、そしてリンティスはこの行為を敵対行動と考えた、もしこの国の認識を越え、けどリンティスの手に負える事が出来る事態が発生すれば、その認識自体も壊れるはず。」


 その見解自体は問題がない、けど事態を収束する為にエフェテルの発展を止めるのか。


 「だからリンティスが手出しの辛い事態が必要なんだ、そうであればリンティスはこの国の発展を認めるでしょう、両全の状況は事態の共同解決。」


 悪くない見解だ、けど理想過ぎる。


 「それだよそれ!」


 アイリーの見解を聴いて悟った様に、ライエの目はキラキラ輝いてる、やがてアイリーを強く抱きしめた。


 「偉いよアイリーちゃん!お姉ちゃん、大感激!」


 「だからいきなり抱き着くな!」


 必死に押し離すアイリーであった。


 「んじゃこれから準備をしに行く、お二人も気をつけて帰るね!」


 疾風のごとしエッグタルトと飲み物を一掃し、ライエはやる気満々で帰った。


 「ありゃ、保護区域から離れるとまだ狙われるだろうな。」


 ライエの後ろ姿を見に、俺はアイリーに向いて言う。


 「しかしアイリーがこんなにも積極的だと思わながった。」


 「ただ、同じ匂いを嗅いただけ。」


 二杯目のカフェオレを飲み干し、アイリーは真剣な顔で俺にライエの護衛を願う。


 「こう見えても一応戦巫女の身だ、剣や盾さえあれば並大抵の戦士や魔法使いなど妾の敵ではない。」


 アイリーのレベルは40もある、いままで遭った者達の中でも最高、ステータスもそれなりに高い、折よくダンジョンに獲得した剣と盾の装備要求に達している、偶然かな。後は戦巫女、アイリーの話からすれば魔法戦士みたいな者、白兵戦と補助魔法を長け、基本的な攻撃魔法も使える、所謂万能系キャラ。


 「それに万が一の場合、妾は転神して戦神子にもなれるから。」


 中二臭い語彙の発音がややこしい、ダイアログボックスがある事が幸いだ。


 「分かった、では頼むよ。」


 アイリーを信じ、俺は「ガーディアンソード」と「真紅なる逆鱗の盾」をアイリーのイベントリに移動した、取り出さなくでも移動出来るとは便利な機能だ、目立たなくで済む。


 「神機兵の剣と竜の鱗!」


 まだ分からない単語だ、けど今回アイリーがいきなり立つから、他客の注目が注がれる。


 「すいません…妾ながら、取り乱れた事を…これほど貴重な武具を承りましたから、マスターの期待を裏切らない様に頑張れる。」


 エインスハイム大通りの辻にアイリーと別れ、俺はバイクを駆け人気の無い海辺に向かう、なぜならこれからの実験を行うのなら、人目を避けた方かいい、一応理屈はあるか、やがて通じるのかな。

溜め書きはこれで終了、次回は執筆中なんですか、何にせよ仕事の隙間で書いた物なので、投稿日は定かではない、すいませんでした

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