英国の旅 - 19
ついに辿り着いた。
もう逃さない。
「友里、行くぞ!」
彼女が頷くのと同時に走りだす。
あの男の力があれば、優奈を……。
それに気がついたのか、伯爵は背中を見せて走りだした。
何故逃げるのだ。
やはり、伯爵が切り裂きジャックなのか?
だとしたら俺と友里はどうするべきなのだろう。
アーサーさんになんて説明するんだ。
友里はどんな顔をするだろう。
きっと涙を流す。
あの男は、自分のしていることが何なのか分かっているのだろうか。
目的は?
何故友里を置いていった?
聞きたいことは山ほどある。
ここで追い付かなきゃ、すべて叶わない。
「先生!! まってー!……逃げないでください! 」
伯爵は振り向きもしない。
「おい! あんたは一体何がしたいんだよ! 」
友里の息が辛そうだ。
それでも彼は足を止めない。
「聞いてるのか!? 伯爵! 」
伯爵と叫んだその瞬間、追いかけっこは終わった。
突然足をぴたりと止めた彼は、ゆっくりとこちらに振り向いた。
距離は約10メートル。フードをしていなければ顔も拝めただろう。
霧が深いせいで、その姿は相変わらずぼんやりと見えない。
だが、間違いなく男だ。
「お前たちは……」
伯爵がぼそりと呟いた。
「先生? 」
友里の問いかけに、彼はぴくりと反応を示した。
「どうして私を置いて行ったんですか? 私は――」
「明日、この時間にもう一度此処へ来るんだ」
伯爵は友里の声を遮って言った。
「……わかりました。約束です」
来ないかもしれないのに……なにか考えがあるのか?
「おい、明日本当に来るとは限らないぞ? 」
彼女は首を左右に振って優しい声で言った。
「本物の先生なら、嘘は言いません。嘘が大嫌いな人ですから! 」
まだ友里は、伯爵を信じているのだ。
なら、俺も……。
「わかった。明日、再び此処で。ビックベンの前で」
それを聞くと、伯爵は霧の中に姿を消した。
俺達は、アーサーさんの居る事件現場、ホワイトホールに戻った後、彼の家に帰宅。
すぐに眠りについた。




