英国の旅 - 17
太陽は地平線に優しく触れて。
空は赤から黒にかけての美しい色彩で人々の心を奪う。
徐々に霧が深くなってきた。
数時間後、視界は一層悪くなるだろう。
現場には既に数人の警官がいた。
その誰もがジャックに対する憎しみと恐怖を隠しきれず、険しい表情で調査を行っている。
美しいこの街で真っ赤な花が点々と咲く。
その身に宿した命と引き換えに。
ジャックは何を目的に人を殺めるのか。
何故、女性だけを狙うのか。
ジャックの正体は誰なのか。
伯爵となにか関係があるのか。
まだ、何もわからない。
「今回も女性か」
アーサーは淡々と言葉を吐き捨てた。
もう、死体も見慣れてしまったのだろう。
「説明してくれ」
部下の男に彼が言った。
「はい。遺体の頭部、両手両足が切断されています。先ほど、片足が近くの林に埋まっているのを発見しました。他の部位に関しては捜索中です。身元もまだ不明です」
アーサーは何度か頷いて、最後に深いため息をついた。
「友里、辛かったら馬車で休んでいるんだ」
しかし、彼女は首を縦には振らない。
「ううん、大丈夫。さ、アーサーさんの邪魔しちゃ悪いし、私達は私達で先生の事を調べよ? 」
ジャックの調査を手伝いたいところだが……。
俺達の目標は、あくまで伯爵だ。
「アーサーさん、近くで聞き込みをしてきます。すぐに戻ってきますから、護衛の方は結構です」
すると、見たことのない形相で彼は叫んだ。
「何を言っているんだ! 犯人が近くにいるかもしれないんだぞ? 一人部下をつける! 」
本当に優しい人だ。
「いえ、調査を進めて、一刻も早くジャックを捕まえてください。……あまり遠くには行きませんから、大丈夫ですよ! 」
納得できていないようだったが、これ以上の問答を避けるため、俺達は足早に現場を去った。
伯爵が切り裂きジャックを関係あるのなら、現場の近くにいたかもしれない。
あの目立つ格好だ、目撃者がきっといる。
「あー、友里。今回は二手に別れるのはやめとこうな」
「そ、そだね! ジャック、近くにいるかもだし……」




