英国の旅 - 8
「本当か!? 」
アーサーは目を開き、今までの落ち着いた雰囲気からは想像もできない大声を上げた。
「は、はい。一瞬でしたけど……」
「何でもいい! 今まで一度も目撃証言が無かったんだ。どんな小さなことでもいい、奴を捕まえるのに協力してくれ!! 」
必死な彼の表情は、この街に潜む殺人鬼の恐ろしさを表しているのだろう。
「昨晩、女性の倒れているのを見る直前です。すぐ近くの外灯の下で、男の人が一人で私達を見ていたんです。灯りの中で、服は真っ黒だった……と思います」
「その男が犯人だとすると、切り裂きジャックは複数犯ではなく、一人。女性が犯人だという説もあったが、それも無いか」
彼は目線を下に向け、ぶつぶつと考察している。
友里の見た男が斬り裂きジャックなら、彼に命を救われたと言っても過言ではない。
「ユウ、ユリ。今日は休日だと言ったが、職場に行こうと思う。長旅で疲れている所申し訳ないのだが、一緒に来てくれないか? 」
危険の無い範囲で、アーサーの調査には協力したい。
「もちろんです。いいよね、悠くん? 」
「ああ、警察署はこの街で一番安全だろうしな」
アーサーは数回頷いて、言った。
「ありがとう! 調査が進むかもしれない。……あ、紅茶のおかわり、飲むだろ? 」
俺と友里はお互いを見て、二人同時に返事をした。
「はい! 」




