英国の旅
英国編です。
この話からでも読んで頂ければと思います。
『時渡り』に利用される空間、『時空街道』。
真っ黒な洞窟の中に複数の出口が点在し、その先に広がる世界を映し出している。
世界中の様々な時代に繋がっているそれは、まさにタイムマシンと表現するに相応しいだろう。
その空間に、青年と少女。
青年の髪は漆黒で短い。
どちらかと言えばつり目だが、決して目付きが悪いわけではない。
時折、前髪の隙間から左目の泣きぼくろが見え隠れする。
少女は栗色の美しい髪を揺らし、青年を先導している。
彼女の着ているベージュのドレスと青年の身を包んでいる黒のスーツは、どちらも立派で美しいものだが、この暗闇ではそれも殆ど意味を持たない。
軽やかな足取りで彼女は足を進める。
先行する友里の小さな背中を追うこと数分。
彼女の足が、一つの出口の前で止まった。
振り返った彼女の表情は、ほんのりと紅く。瞳の輝きは、希望に満ち溢れていた。
随分と高揚している様に見える。
「友里、楽しそうだね? 」
今日の彼女を見れば、誰もが尋ねずにはいられないだろう。
何か、いいことでもあったのか。
「え? そう? んー。悠君、……次の時代、何処だと思う? 当ててみて? 」
友里は、その表情に相応しい声色で言った。
友里が、……十代の若い女性が喜びそうな時代か。
最近は、日本の武人が好きな女性が多いと聞く。
だが、彼女は本能寺の変を好気の目では見ていなかった。
映画『タイタニック』を観たことがあれば、先刻までいた時代はとても興味深い経験になったはずだ。
しかし、彼女はそれほど興味を示さなかった。
うーん。
当てずっぽうで答えてもいいが……。
「――お手上げです。何処なんだ? 」
何のヒントもないこの状況では、彼女の軍門に降る他ない。
彼女は不敵な笑みを浮かべた後、眩しいくらいの笑顔でこう答えた。
「1888年。場所は……イギリス! 首都、ロンドンです!! 」
なるほど、女性は好きそうだ。




