船旅 - 18
彼の表情から酷く興奮しているのが見て取れる。
現在、レオナに仕えている彼に一体どの様な過去があるのかは解らない。
だが、拳をぶつけ合い、歓喜する彼の姿に少しだけ恐怖を抱いた。
「お前より華奢な男と殴りあったことは無い。そして、お前より長く殴りあった男も居ない。……名前は何と言う」
アレックスの問いかけを、軍服の男は笑って誤魔化した。
二人の攻防は時折、嵐のように発足し、暫くするとお互いに満足した顔で静止する。
怒涛の嵐となり、荒々しい音が室内に鳴り響く。
静寂の風が吹き、張り詰めた空気が室内に満ちる。
何度と無く繰り返されるそれは、時間を回帰しているようだ。
二人は疲労の色を見せないが、お互いの服は随分と破れ、出血も少なくはない。
「しつこい男だな……。そろそろ時間だ……」
軍服の男が漸く口を開いた。
アレックスがそれに答える。
「時間? なんだ、この後用事があるのか? 折角の衣装、ダメにして悪かったな」
茶化すように言った。
「ふん。すぐにわかるさ、今回は退いてやる」
男は床に落ちた軍帽を拾い上げ、頭に乗せた。
その直後だった。
船が今までに無い大きさで揺れた。
俺と友里は大きくバランスを崩して転倒し、アレックスも膝を地面に着けた。
「な、なんだ?」
柱に拘束した男が叫んだ。
アレックスはすぐに体勢を整え、軍服の男に視線を戻そうと顔を上げた。
しかし、既に男の姿は無く、部屋のドアが虚しく揺れていた。




