船旅 - 17
まだ軍服の男と対峙している。
制したスーツの男を部屋の角へと連れていき、身につけているネクタイで両手を四隅に在る柱に結びつける。
友里が拘束されている柱とは対角線上に在る、最も遠い柱だ。
男は抵抗する様子も無く、素直にそれに従った。
「随分と大人しいな」
隙をついて反撃してくるのか、逃げ出すのか。
どちらにしても、油断できない。
「なぁ……あんた、何者だ? 素人の動きじゃなかったぜ」
男が少し笑いながら言った。
「そうか? ん……だとしたら、偉大な師のおかげだな。もっとも、見覚えの師だが」
柱へと固定し終えた俺は、アレックスの邪魔をしないように部屋を大きく回り、友里の許へと向かった。
「悠君! 怪我は無い? ごめんなさい……。私、また悠君に迷惑を」
彼女の目には朝露の様な水滴が浮かび、やがて重力に逆らえきれずに流れた。
「待たせてごめんな、すぐにロープを切ってやるから」
彼女と柱を繋ぐロープは、固く結ばれており、手で解くのは困難なほどだった。
ナイフでそれを切りながら、彼女の腕に着いたロープの痕が少しでも速く消えることを祈り。――再びアレックスの方へと視線を戻した。
安心するのは早い、まだ終わってなどいない。
二人はお互いに武器を持たず、より大きな拳を構えたアレックスが有利に見える。
どちらも無駄に動くことはせず、お互いを見つめ合い、時折拳をお互いの体にぶつけ合う。
避けることもせず、鈍い音が鳴り続ける。
声を掛けるべきではないだろう。半端な集中力ではない。
「ユウ、手を出すなよ?」
アレックスは一切視線を動かさずにそう言った。




