船旅 - 12
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レオナの背中を見送り、階段を降りた。
船内に輝くシャンデリアの光が、徐々に届かなくなっていく。
やがて俺を照らす光源は、綺羅びやかなそれから、壁に灯った控目な蝋燭の炎へと替わった。
階段を降りてすぐ、先ほどの男に見つかるだろうと思っていたが、その読みは外れ、降りた先には誰も居なかった。
その代わり、右手に細く長い廊下が続いていた。
壁には点々と小さな炎が揺れている。
蝋燭の炎だけでは、足元を灯すのに心許ない。ましてや、進む先に何が在るのか、薄目で確認することも出来ない。
廊下は一本道か、迷路のように入り組んでいるのか。
一人で進むべきなのか、アレックスを待つべきか暫く迷い。
やがて、足を一歩だけ進めた。
靴が、床に当たる音がカツンと鳴った。
一歩、また一歩。
「誰かいるのか」
少し進むと、前方から男の声が聞こえた。
先ほどの男の声に、よく似ている。
「人を探しているのですが」
廊下の先に、男が立っている。
髪が赤く見えるのは、蝋燭のせいだろう。
背が高く、タキシード姿だ。
「この先は立入禁止だ。人探しなら、他を当たるんだな」
男は低い声で答えた。
威圧的な言い方だ。
「栗色の髪の女の子です。見ませんでした? 」
近寄りながら、男に言った。
「……お前が伯爵か、思ったより若いな。聞いていた服装とも違う」
男は口角を少し上げ、嬉しそうに言った。
俺の感は間違っていなかったみたいだ。
男達が捕まえたという少女は、友里で。
餌にして探していたのは、伯爵だったのだ。
友里はこの先にいる。
幸か不幸か、伯爵の話も聞くことが出来そうだ。
「友里は、この先に居るんだな? 」
男は何も言わずに、右手に大きな拳をつくり、殴りかかってきた。




