船旅 - 6
さて、どうしたものだろう。
熱鉄の如く輝く太陽は、日の輪を水平線にしまい込み。
高く美しい空を宵闇が染めてゆく。
友里との合流時間から、後数分で一時間が経過する。
聴きこみという調査方法を取っている以上、多少の遅刻はあるだろうが。
流石に異常だ。
探しに向かったほうがいいだろうな。
先刻、友里が軽快な足取りで下りていった階段を前に、息を呑んだ。
もう一度、周囲を見渡し、彼女の姿が無いか確かめる。
その行為も虚しく、やはり彼女は見つからない。
よし、行くか。
燭台には火が灯り、階段と俺の足元を怪しげに照らしている。
身につけている黒いスーツは、黒曜石の様な高級感のある漆黒から、悍ましい黒血に染まった。
金属で出来た手すりを滑らせ、追われる罪人の様に警戒しながら階段を下りて行く。
辿り着いたのは船の中とは思えない巨大なホール。
それ相応のシャンデリアを始めとする、綺羅びやかな装飾で目が眩む。
デッキで行われていた立食パーティにも勝るとも劣らない賑わいだ。
友里はここにいるのか?
誰か友里の姿を見た人は……。
燕尾服を身につけた男性。
どこかの家の執事か。
いや、ここのバーテンダーだな。
背の高いスーツの男性。
良家の長男って顔だ。
どこかで見たような気がする。
隣には黄金の頭髪を縦ロールにした女性。
お、あの人は!
昼間の女性だ。
似たような髪型、服装の乗客は沢山いるが、隣に立っている男性にも見覚えがある。
間違いない。
あの二人、友里の姿を見ているかもしれない。
「失礼します。今、いいですか? 」
彼女は俺の顔を覚えていたようだ。
「あら、さっきの方ね。今度はどうしたの? 」
協力的で助かる。男のほうがギロリと此方を睨んだ。
「ええ、それが――」
「私が話を聞こう」
背の高い男性が俺の前に腕を組んで立った。
「え、ええ。連れが行方不明なんです。栗色の髪を、肩まで伸ばしていて、ベージュのドレスを着ているんですが、見ませんでしたか? 」
男は俺の目的がナンパで無いことを知ったからだろうか、その表情と緊張を解いた。
友里の特徴をざっと説明すると、
「ああ、あの子か。ついさっきまで此処に居たよ。大声出して、随分目立ってた」
「あの子、貴方の彼女だったのね。あんな可愛い子、手を離しちゃダメよ? 」
やはり此処に居たのか。
「それで、何処に行ったのか分かりませんか? 」
自然と声が大きくなり、怪訝な顔をされた。
「なにかあったのか? 私で良ければ一緒に探そう。あれだけ目立っていたんだ、他の皆にも聞いてみれば何かわかるかもしれない」
「私も手伝うわ。貴方、日本人でしょ。手を貸す代わりに、ディナーの時、日本のお話を聞かせて頂戴ね? 」
スーツの男性は右手を、女性は左手を前に出した。
「アレックスだ。彼女はレオナ、俺の主人だ」
「俺はユウです。ご協力感謝します」
「ユウ! よろしく! 」
二人の手を握り、小さく上下に振った。




