船旅 - 2
デッキで警備員が忙しなく走り回っている。
何かあったのだろうか。
「友里、海外に来たのはいいが。言葉が話せないぞ」
すると彼女はニヤリと悪戯に微笑み、時計を指さした。
「時渡りの時計には、基本的に自動音声翻訳機能が付いています。当然、私のこの時計にも、悠君の持っている懐中時計にも。昨晩、機能をONにしておきました。……っていうか、今まで周りの人達が日本語話しているのを聞いて不思議に思わなかったんですか? 」
自慢気に語りだした。
――本当だ。
気が付かなかったなんてどうかしている。
耳を傾ければ彼らの会話が聞こえてくるじゃないか。
素晴らしい技術に感動を覚えずに入られない。
「おい、無銭乗船したってヤツらは見つかったか? 」
その内の一人が言った。ヒゲの濃い男でかなりガタイがいい。取っ組み合いになったら負けるだろう。その体格にふさわしい大きな声で、聞き取るのは容易だった。
「いいや……。チケットを一人づつ確認するのは、やはり時間がかかるな」
対してヒョロヒョロの警備員が答えた。果たしてその肉体で警備できるのか。
しかし、夢の様な機能だ。
全く違和感なく会話が聞き取れる。あの男たちは最初から日本語を話しているのでは無いかと思える程だ。
これを現代で発表したら……。
いや、それよりも。彼らの今の会話。
もしかして、俺達のことか?
時渡りでこの船に辿り着いた俺たちは、当然チケットなんて所持していて無いし、バレたら降ろされるか、何処かの部屋に軟禁されるのか。
どちらもマズイ。
警備員には近づかないほうが良さそうだ。
パーティ会場でウエイターから貰ったグラス片手にを数歩前を歩く友里にその旨を伝える。
「でも、先生を探すには警備の方に聞くのが一番早いんじゃ……? 」
「その通りだ。だが、船を降ろされたらどうにもならないだろう? 背に腹は変えられないってやつだ」
彼女はグラスに残っていた紺色の怪しいジュースをぐいっと飲み干した。
「そうですねっ! 地道に乗客から聞いて回りますかー」
いつの時代も調査の始まりは聞き込みからだ。
その後、数名の乗客に話を聞いたが、伯爵に関するヒントを得ることは出来きず。
「ふた手に別れて聞いて回りましょう。日が沈んだら此処に集合ですよっ!」
という友里の提案でふた手に別れて調査をすることになった。




