23/71
火蓋
夕食の後、俺達は再び自室へと戻り、各自仮眠を取った。
仮眠といっても夕食の時間が早かった為、五時間ほどは眠ることができた。
初めて時渡りをしてから今までで、一番深い眠りだっただろう。
この時代で旅を終わらせる。伯爵に会い、そして……。
そのために随分な旅をしてきた。
友里にも迷惑や心配を幾度と無く掛けた。
伯爵の本意は何一つわからないままだが、それも今日までだ。
子の刻、俺達は予定通り館を後にした。
現代では想像もつかないような暗闇の中を数名の組に分けて移動を開始した。
俺と友里は明智を含めた数人の集団だった。
夜が明ける頃、陣地に到着した。
既に数えきれない程の兵が集まっていて、俺たち(主に明智)を迎えてくれた。
武具の最終チェック等を兵たちがしている。
友里の方を見ると「大丈夫。まだ先生はこの時代に居ます」と頷きながら口にした。
今度こそ。
――やがて、日は昇り。光秀の演説が終わった後、各小隊で進軍を始めた。
「敵は、本能寺にあり」




