再び暗闇
ん。
ここは?
気がつくとやはり今度も、森の中に居た。
ついさっきまで居た御門家裏の池の辺りでは無い。
水の気配は感じられない。
只々木が茂るばかりの森である。
周囲は暗闇で満ちており、虫の美声が微かに響いている。
すぐ近くに倒れている友里も目を覚ましたようだ。
「友里、何が起きたのか解るか?」
友里は困惑した表情で腕時計を確認し
「千五百……。えっ」と呟いた。
一体、何が。
「私達、さっきと違う時代に居るみたいです。……いや、私じゃないですよっ!? 私は何もやってないですっ!」
違う時代?
時渡りが起きたというのか。
それとも、まだ俺の知らない現象があるのか。
どちらにせよ、困惑する友里の顔を見て、少し冷静にならねばと心のなかで自分に言い聞かせる。
辺りに人の気配はない。
「とりあえず。人を探そう」
友里は小さく「はい」と言いながら立ち上がった。
真っ暗闇の中、木々の間を右往左往してようやく道へ出た。
木々に挟まれた細い道だ。当然、舗装などされていない。
「なにが起こったんでしょうか。時渡りは自然現象では起こり得ないはずですから、誰かの手によって強制的に行われたのは確かですが……。時渡りは誰にでもできるわけではないですし」
自分の手によって時渡りをした時はこんな顔を見せなかったが、何の前触れもなく急に別の時代に吹き飛ばされたら、やはり不安になるようだ。
そんな心境から来ているのだろうか、さっきから左腕に引っ付いて離れない。
「とりあえず、落ち着ける場所を探そう」
俺たちは土の道を只々真っ直ぐ進んだ。




