戦禍に
私達が次にたどり着いたのは1582年。
「なんだか、騒がしいですね」
前の時渡りと同じく、周りを見渡しても只々木々が茂るばかり。しかし、前回のような静夜では無い。
どこからか、男性の図太い叫び声が聞こえてくるのだ。悠君にも聞こえているらしい、忙しなく辺りを見渡している。
「あっちから聞こえるみたいだ。行ってみよう」
悠君が指を指した方へと私たちは歩き出した。
進む道は、けもの道。左右の木が枝を伸ばし、私達の行く手を阻む。
足元では草が和服の裾を引っ掛け、私を転ばせようとする。周りは敵ばかりだ。
私は、目の前の悠君の背中を一生懸命に追いかける。
徐々に声が大きくなってくる。荒々しい叫びが脳内に響く。
「なっ」
急に悠君が立ち止まり、その背中に頭をぶつけた。
林を抜けたようだ。どんな世界が広がっているのだろうか。
「ど、どうしました?」
「一度戻ろう」
そう言いながら身体を少し斜めに逸らし、その先で何が起こっているのか見せてくれた。
戦。
目の前に広がるのは刀を持った男の人たち。
みんな、血だらけだ。
あまりの映像に直視できない。
目を瞑り、後ろに下がろうとした瞬間。
腕が強い力で引っ張られた。
そのまま私は倒れてしまう。
「……ッ!」
突然のことで理解するまで時間がかかった。
悠君の左肩には鉄製の鏃を先に付けた棒が。矢が刺さっていた。
私を庇ったのだ。
「ゆ、悠君!?」
傷から血液が滴り落ちる。
「血っ!? ど、どうしよう……私のせいだ。すぐに止血しないとっ!」
でも、救急セットなど持ち歩いていないし。
このままだと。
とりあえず服を破いて……。
ダメ……こんな布切れで肩を縛るのはやはり無理だ。
とまらない。
「どうかしましたか?」
背中から若い男性の声が聞こえた。
――
友里の背後から矢が飛んできたことに気づけたのは偶然だった。
だが、突然のことに対応できた自分を今は只々褒め讃えたい。
左肩に直撃した矢は思ったより深く突き刺さり、想像していた以上の血液がだらだら溢れ出ている。
直視しているとそれだけで気分が悪くなる。
このまま放置すれば出血多量であの世行きは間違いない。
変な汗も額から出てきた。
友里は泣きながら必死に止血しようとしている。
俺が最後に観た景色はそんな絶望的な場面だった。




