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行く先

 翌朝。

 この街で一番大きな屋敷の前に俺たちはいる。

 あの後、街で先ほどの男について情報を集めた。

 彼は随分と有名で、あっという間に家の場所まで調査できた。

 その後、呉服屋で交換してもらったお金で宿に泊まり、ゆっくりと休んだ。

 手持ちのお金では一部屋しか借りる事ができなかった。

 しかし、友里は全く気にしていないどころか、最初からそのつもりだったようだ。

 俺達は部屋に入ってすぐに眠ってしまった。伯爵について徹夜で聴きこみした疲れが溜まっていたのだろう。


「行きましょう」

「……よし」

 屋敷の警備であろう人物に声をかける。


「すいません。ここの御主人にお話を伺いたいのですが」

「ダメだ! 主人は常に多忙で、そなた達の相手をしている暇など無いわ!」と、すごい剣幕で追い返された。

 しかし、此方も諦めるわけにはいかないのだ。

「数分だけですから。少しだけ」

「くどい! これ以上引かぬなら刀を抜くのもやぶさかではないぞ」

 それは困る。流石に勝ち目はない。

 友里も一度引きましょうと目で合図を送っている。

「伯爵について。何か知らないか」

 この際、警備の人に聞いてみる。

「……おぬし等、あの男の知人であるか。暫し待たれよ」

 男はそう言って屋敷の中へと消えていった。

 どうやらアタリのようだ。

「伯爵に一歩近づけたみたいだな」

「やっと……」

 彼女はそれだけ小さく答えた。




 俺達が通されたのは広い畳の部屋だった。何人もの使用人がこちらを見張っている。

 正直、逃げたい。

「それで、あやつとはどういった関係だ」

 昨日、港で話をしていた男がこの上なくたるそうに口を開いた。

「俺達は、」

 瞬間、近くに居た使用人が刀に手を触れた。

「私達は伯爵の弟子でございます」

 とんでも無い所に来てしまった。

 こんな所で変なミスはできない。刀で斬られるだなんて冗談ではない。

「ほう。ならばヤツに伝えてくれ。言われたとおりに済ませたと。彼を追いかけるのだろう?」

 済ませた。

 どういうことだろうか。

「つかぬ事をお聞きしますが、先生が何処へ向かったのかご存知でしょうか……」

 友里がようやく口を開いた。

「なんだお前たち、弟子でありながら師の行先もしらんのか」

 やばい。

「失礼。師匠は普段から行先を告げずに旅立ってしまうのです。我々も追いかけるのが大変でして」

 苦しい言い訳だったか。

「まあよい。都の本能寺に行くと言っていたぞ」

 本能寺。

 男はニヤニヤしながらこう続けた。

「しかし、そなたらの師はとても良い占い師であった。まさか、異国の船がやってくることを予知するとは、最初は大嘘つきだと蔑んだものだが。大した腕前だ。おかげで一儲けできた」

 そういって下品に笑った。

 一儲け……。

「それは、どういったことでしょうか」

 男はつまらなそうにこちらに視線を移した。

「まり……なんとかという葉じゃ。アメリカから格安で輸入しようというのはあやつが案をだしてくれたのじゃ」

 まり……マリファナ。

「それを街のやつらに配ってな。金をとるのだ。これもお前たちの師の勧めじゃ」


 伯爵が!?

 友里と自然と目が合った。

 伯爵がどんな人なのか、俺にはまだよく分からない。

 だが、そんなことをする人物だとは思えない。

 後ろを振り向くと

「そんな……嘘だよ」

 小さな声で囁くのが聞こえた。

 友里の目には涙があふれていた。

 当然だ。

 やっと手に入れた師の手がかりがこんな物では泣きたくもなる。

「失礼ですが。それは事実でしょうか。私たちの知る伯爵は、そのような……」と言いかけたところで背後から冷たいものが首に触れた。

「これ以上の無礼は許さん」

 本物の刀を始めて見た。

「うっ……」

 流石に分が悪い。

「出て行け。先ほども申したとおり、主は多忙なのだ」

 そう言って刀を収めた。

 それと同時に友里の手を引いて駆け出す。

 屋敷の外に逃げ、背後を振り返る。

 追手の姿は無い。しかし、マリファナの事実を知っている俺たちをあの男はほうって置かないだろう。

 何処へ逃げるか。


 右手に感じる友里の手はとても小さくて少し力を入れると薔薇の花の様にくしゃりと壊れてしまいそうだった。


 結局、この時代についた時最初に居た森へと逃げ込んだ。

 ここなら当分は追手に見つからないだろう。

「友里」

 彼女はまだぐすんぐすん言っていた。

「先生はそんなコトする人じゃないですっ……」

 彼女は何度もそう繰り返した。


 俺達は森の中の少し開けた場所で休むことにした。

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