街
街は思ったより賑わっていて、明かりのついた店もいくつか在った。
ガタイのいい男たちが酒であろう液体を浴びるように飲んでいる。
街の至るところには笹が飾られ、色鮮やかな和紙がそれに吊るされている。夜風を受けた短冊は、ひらひら宙を泳いだ。
どうやら今日は、七月七日で七夕の節句のようだ。
街の通りで飲み歩く人を見て、昔の人は早く寝るというイメージは見事に崩れ去った。
詳しい時間は解らないが、彼らがまだしばらく騒ぎ続けるだろうことは容易に想像できた。
皆、俺と友里の方を珍しそうに見ている。
「なんでこっちを見ているんでしょう」
友里が不安そうに呟いた。
「服装だろ。まだ洋服が出回っている時代じゃないからな」
友里の問に答える。
たしかに少し周りの視線が気になるな。どうしたものか。
「驚きました。悠さん、時渡りを知ってまだ間もないのに、随分落ち着いていらっしゃるんですね!」
友里が言った。
しかし、そうではない。
「逆だよ。もう吹っ切れたんだ。時渡りなんて最上級に信じられないものを経験したからな」
俺がそう言うと笑いながらそうですねと彼女が答えた。
早めに服を着替えたほうがいいだろう。無駄に目立ってしまう。
「それで、伯爵は何処に居るんだろうな」
我慢できずに歩きながら尋ねる。
「わかりません。町の人に聞いて回るしか無いですね。幸い、先生はいつもあの目立つ格好をしています。きっと、すぐに見つかりますよっ!」
確かにこの時代で伯爵の服装はこの上なく目立つだろうな。
「あ、あれ! 見てください!」
友里が一軒の店を指さしている。
呉服屋だ。
「おや、いらっしゃい」
ギリギリ営業中だったようで、店の中には店主しかいなかった。
「お客さん、随分珍しい服を着ているね。それ、どこで手に入れた」
おや、洋服に興味があるのか。中々見る目があるな、数十年後には、皆洋服を着ているぞ。
「んー。それは秘密だ。だが店主、もしよければこの店の服と交換してもいい」
ダメ元で訪ねてみる。
友里も、それは難しいでしょと眼で訴えている。
それだけに、
「いいのかっ! なんでも好きなのを一着づつ選ぶといい!」と店主が言ったときは驚いた。
俺は黒無地の羽織と髷が無いのは不自然だと思い、笠を。
友里は艶やかな赤をベースに花の装飾がされた高そうな小袖と簡単な化粧道具を交換した。着るものだけでなく、お金も少しだが頂いた。
初めはお互いに照れくさくもあったが、暫くすると慣れてきて、街にも溶け込んでいるように思えた。




