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アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
#7 タイミング・シート乱れ打ち!
98/213

内省

 山田が市川の背中を軽く叩いた。



「もう、その辺にしとけ」


 市川は「ひいーっ! ひいーっ!」と必死になって笑いの発作を抑え込む。あまりに笑いすぎて、息が苦しい。

 洋子が大きく、両手を上へ差し上げた。

「なるほどね、【タップ】の台所事情は、ぜーんぶ、判ったわ! でも、そんなの、あたしたちには関係ないわ! あたしは、どうしても、元の世界へ帰りたいわ! 何たって、こんな……こんな馬鹿げた衣装しか着られないなんて、耐えられないわ!」


 洋子は自分の身に着けている軍服を、忌々しげに睨んだ。

 胸元が大きく開き、ぴちぴちに短いスカートに、まるでSMショーの衣装のような長い革靴という格好である。じろっと市川を睨みつける。


「あんたのせいだからね! あんたが、こんな衣装を設定したから……。ねえ、どうしてもっと、まともな設定にしなかったの?」


 市川は、ぶすっと返答した。

「しょうがねえじゃないか。木戸さんの注文なんだから……」


 山田も考え深げに呟いた。

「おれだって、元の世界へ帰りたいのは同じだよ。おれにも家族がいるしな……。末の娘は来年、中学に進学だ。こんなところで、うろうろしちゃいられないんだ……」




 市川は、自分はどうなんだろう、と考えた。独身で、家族もない。恋人さえ、いなかった。

 杉並の、アパートに待つのは、DVDの山と、ゲーム機、それにネットに繋がったパソコンだけである。

 是非とも会いたいと思う、友人すら全然いない。




 思えば、中学卒業と同時にアニメ業界に飛び込み、無我夢中でやってきた。好きな仕事ができるだけで満足で、他の余計な考えが忍び込む余裕すら、欠片もなかった。

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