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大ニュース!
山田は腕組みを解き、新庄を見た。
「どうしたんだ……」
新庄は扉を背中で閉めると、その場で小躍りしている。
顔を上げると、注目している三人に気付き、照れたように額をぴしゃりと、手の平で打った。
「ニュースだ! 大ニュース! 何と、五番目の王子様の結婚が決まったぞ!」
「何だって!」と、三人は一様に叫ぶ。市川もまた、それまでの鬱々とした状態から、一気に目が覚めた思いであった。
「五番目の王子様って、三村の……?」
市川の呟きに、新庄は大いに頷いた。
「そうさ! 前々から話はあったが、今度の成人の祝いと同時に、発表があった! 王子様──つまり三村君は、これから隣国のお姫様に会いに出発する! しかも、おれたち四人が、御付きの者として選出された!」
さっと市川は立ち上がった。
やりやがった!
おれの忠告に従い、三村の奴、行動を共にするため王子の特権を利用したんだ!
ストーリーが動き出した!
これからの予想は困難だが、これで現実世界への帰還が、一歩だけは近づいた!
その時、市川は、心底から確信していたのだ。
少なくとも、この時点では……。