出獄
三日が過ぎ、市川はようやく解放されて、ヘロヘロの状態で引き出された。
身動きがとれない、狭苦しい部屋での禁固刑が、これほど体力、気力を消耗するものだとは、思っても見なかった。今度、主人公が牢獄に閉じ込められるアニメの仕事があったら、リアルに作画できるなと能天気に思った。
刑期を勤め上げた市川は、新庄の執務室に迎え入れられた。執務室には、すでに山田と洋子が待っている。
長椅子にへたりこんだ市川の目の前に洋子が立ちはだかり、両手を腰にやって高々と説教する。
「馬鹿ねえ……。あんたが馬鹿だとは前から思ってたけど、あれほどの掛け値なしの、最低の大間抜けだとは知らなかったわ!」
市川には言い返す気力は、一ミリグラムも残ってはいなかった。
「おい、説教もほどほどにしとけよ。市川君も、こってり身に応えたろうし」
山田が相変わらずの、のんびりとした口調で嗜める。洋子は「ちっ」と舌打ちした。
「それで、王子様が三村君だってのは、確かなの?」
市川はのろのろと顔を仰向かせ、洋子の質問に軽く頷いた。
「そうか」と山田は腕を組む。
軽く眉を寄せ、何か考え込む仕草である。
「どうなるんだろうな……。これからストーリーは、まともに進行するんだろうか?」
その時、ばたり! と大きな音を立て、執務室の扉を開いて、新庄がせかせかした様子で入室してきた。
「大変だ、大変だ! 大変だったら、大変だ!」
まるで歌うように、奇妙な抑揚をつけている。「大変だ」と言う割には、表情は輝き、両目にはウキウキした態度が見られる。