まだ見ぬ仲間
市川はもう一度、呟いた。デスクには動画用紙の束がずしりと鎮座している。
胸の奥で、怒りの導火線がぶちぶちと火花を散らして燃えているのを感じる。今にも爆薬に点火し、爆発しそうに思える。
その時、山田が、のんびりとした声を上げた。
「ところで三村君は、どこにいるんだ?」
「へっ?」
市川の怒りの炎が、呆気なく消滅した。山田の場違いともいえる、呑気な声を耳にすると、いつもこうなる。山田の声を聞いていると、怒りを持続させるのが難しいのだ。
洋子が小さく頷いて、口を開いた。
「そうよね。あの〝声〟は、五人で揃って行動しろって命令してたわ。三村君が加わって、五人になる計算よ」
新庄は。ぎろぎろと両目を光らせた。
「どうやって見つければいいんだ? この広い世界で、たった一人の人間を」
山田はなぜか自信満々に、にやりと笑った。
「それなら心配ない! あの〝声〟が言っていたろう。おれたちは『蒸汽帝国』の主人公だって」
市川は、がしがしと頭を掻いた。
「判んねえなあ! それが何の関係がある?」
「つまりだな」
山田は相変わらず、のびやかな口調である。
「おれたちが主人公なら、おれたちの行動がストーリーを作る。主人公の一人に三村君が加わるなら、おれたちが行動していれば、そのうち勝手に登場するはずだ!」