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アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
番宣・その二
67/213

牢獄

 はあはあと荒々しい息遣いをして、木戸はよろよろと演出机に近づいた。演出部屋は事実上、いや、どんな言い繕いをしても、牢獄である。木戸には耐えられない。


 自暴自棄が木戸にとんでもない行動をとらせる。


 木戸はたった今、書き上げたばかりの絵コンテ用紙を取り上げた。ぐいっと用紙の真ん中を握りしめ、びりびりばりばりと引き裂こうとする。




 ──やめなはれ! 折角、書き上げたばかりやおまへんか!




 木戸は〝声〟を耳にして、にったりと唇を笑いの形に歪めた。〝声〟には、微かに狼狽の響きが認められたからだ。


「ここから出られないなら、こんなもの!」


 ぐいっと、用紙の束を捻じる。




 ──あんたには、無限といっていい時間をくれてます。短気は、よしなはれ。




 木戸は絶叫した。

「どうして、おれを出してくれないんだ! 見ての通り、絵コンテは完成したんだぞ!」




 ──第一話だけや、おへんか? シリーズはワン・クールあるんやど。





 木戸は、あんぐりと口を開いた。

「十三話、全部そっくり描けってのか?」





 テレビは十三週でワン・クールという数え方をする。ほぼ、三ヶ月分に相当する。普通、アニメのシリーズは二十六話、つまり、ツー・クールで一まとめとなる。一年続くと五十二話。つまり四クールである。

 十三話というのは、かなり短い。本来はツー・クールあったほうが、後々DVDなどにして販売する際、営業上も有利なのだが、プロデューサーの新庄は大事を取って十三話という構成にしたのだった。





 ──そうや、この際やから、あんたには全部の話を絵コンテにしてもらいたいんや。時間は仰山、ありまっさかい、存分にやっておくんなはれ!





 へたへたと木戸は膝を折り曲げ、座り込んだ。真っ暗な絶望感が込み上げる。

「いやだ! おれはもう、耐えられない……。ここから出してくれよう……」


 すすり泣く。

 が、〝声〟は答えようとしなかった。

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