プロデューサー
もう一度「ふーむ……」と唸ると、新庄は首を振った。一瞬のうちに、決意の表情が浮かぶ。
「それなら、近衛兵に応募するのが、一番いい! 近衛兵は、王族と王宮を守る役目を負っている。実を言うと、おれは帝国軍で近衛部隊の隊長を務めている」
「つまり、近衛兵になれば、あんたの指揮下に入るってわけだな?」
新庄は市川の言葉に、くしゃっと歪んだ笑いを浮かべた。
「まあな! しかし、そうなれば、色々おれが便宜を図れる。よし、君らの用紙を渡してくれ。おれがサインをしておく!」
引っ手繰るように新庄は慌しく三人の用紙を受け取ると、手近の机に上体を折り曲げ、胸に差したペンを抜き取り、さらさらと用紙の隅にサインを施した。
最後に、べったりと判子を捺した用紙を掲げ、にったりとした笑みを浮かべた。
「用紙を持って、装備品の受け取りに行け! そこで君らの装備が揃う。一人前の軍人らしくなったら、おれの執務室に来い!」
きびきびとした口調になった。新庄の口調は、軍人というよりは、有能なプロデューサーそのままだった。
市川たちは用紙を受け取ると、その場から立ち去った。
通路を足早に歩いていくと、ちらりと視界の片隅に、あの女が立っているのを認めていた。
女は、ありありと不審な表情を浮かべ、市川たちを見送っていた。