相談
新庄は、きょときょと落ち着かなく、辺りを見回す。市川はわざと列の最後尾についていたため、背後には誰もいない。将軍たちもすでに退席していて、部屋には市川たち三人と、新庄だけの四人である。
「市川……それに、山田さん。洋子ちゃんか。あんたら、何か知っているのか。この……この状況について……!」
新庄は見る見る、軍人らしき態度をかなぐり捨て、以前のアニメ制作会社社長らしき物腰を取り戻してくる。
市川たち三人は、深く頷いた。新庄の瞳が、考え深いものになった。
「ここでは、まずい! おれはこれでも、帝国軍の中佐だ。どこか、人目のつかない場所で相談しようや」
山田が口を開いた。
「何か、考えがあるのか?」
「うむ」と一つ頷くと、新庄は指先を上げ、廊下の先を示した。
廊下は長々と伸び、片方は窓になっていて、もう片方の壁には何枚もの扉が、ずらりと並んでいる。
「三つ目のドアが、おれに与えられた執務室だ。入室禁止の札を架けておけば、誰も入ってこられない。一緒にぞろぞろ歩くのはまずいから、後で訪ねてきてくれ。しかし、ここに来たところを見ると、あんたら、帝国軍兵士になるつもりなのか?」
市川は軽く肩を竦めた。
「そうだ。そうでないと、物語が進行しないからな。軍隊に入るなんて、ぞっとしないが、しかたない」
洋子も同意する。
「そうなのよ! あたしたち、元の世界へ戻りたいの。そのためには、兵士になる必要があるの」