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アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
#5 衝撃のシリーズ構成
61/213

階級

 用紙に記された地図を頼りに、王宮の内部を歩いていく。山田は自分の設定が現実になっているのが珍しいのか、しきりと天井の飾りや、壁に架けられた絵画に見とれ、歩みが遅くなる。


 王宮内部はやや近代的な、山田の言葉によれば「アール・デコ」様式の造りになっていた。現実世界では、一九二〇年代から三〇年代に流行した形式らしい。直線と、曲線が巧みに組み合わされ、簡素さの中に、優雅さが織り込まれている。


 地図に導かれ、市川たちは広々とした部屋に辿り着いた。部屋には、すでに何名かが先着し、思い思いに椅子に座ったり、壁際に背中を押し付けるようにして立っている者も見受けられる。




 市川たちは最後の組らしく、入口から内部に歩を進めると、先着の応募者たちがじろりと鋭い視線を送ってきた。

 皆、押し黙ったまま、待ち続けている。


 市川たちは、木製の長椅子を見つけ、三人で並んで座り込んだ。


 市川は会場の前方に、あの女の後ろ姿を見つけた。女は一人、椅子に腰掛け、長い亜麻色の髪の毛を見せている。



 しばらく待つと、もう一方のドアが開き、数人の軍人がぞろぞろと入室してきた。

 全員、応募者を前に、整列した。



 ばりっとした制服の胸には、様々な略綬が埋め尽くすように飾られている。皆、将官クラスの階級であった。

 その列の最後尾にいる一人の男に、市川は注目した。襟元の階級章は、中佐を示している。市川は以前、戦争もののアニメを経験していて、階級賞には詳しい。



 そっと隣の山田に話し掛ける。

「おい、あの中佐……」

 山田も「うん。判ってる」と頷き返す。

 ゆっくりと洋子が囁いた。

「平ちゃんよ! あんたの設定したキャラクター、そのまま!」



 新庄平助──。アニメ制作会社『タップ』の社長にして『蒸汽帝国』プロデューサーであった。

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