表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
#5 衝撃のシリーズ構成
50/213

夜明け

 夜が白々と明けてきて、市川たちはそれまで潜んでいた建物の裏手から、表通りへと移動した。

 雑踏が、市川たちの目の前に表れた。




 道路は総て石組みで、雑踏を構成する市民らしき人々の姿は、十九世紀のものだ。

 男はフロック・コートに山高帽という、陰気な服装で、女は目の覚めるような色鮮やかなドレスを身に纏っている。


 時折、洋子と同じような、肌の露出が多い服装の若い女性も混じっていた。大多数はヨーロッパ風の衣装だが、アジア風の、いや中近東付近だろうか、異国風の衣装を身に纏った通行人も混じっている。


 印象的なのは、かなりの割合の通行人が、市川がベルトから提げているような武器を所持している光景だった。もし、ここが現代日本なら、即座に通報され、逮捕されるだろうが、皆いずれも平気な顔で通りすぎている。




 市川は無言で、通り過ぎる群衆をじろじろと、無遠慮な視線で眺めていた。自分が同じ場面を作画するとなると、やはり今ここで見ているような通行人を描くはずだ。


 通行人の動きを観察し「やっぱり三コマのタイミングだ。作画枚数を節約するために、スライディングを使っているな」と瞬時に思った。このような異様な状況にあっても、市川の作画マンとしての本能は、アニメの製作過程を頭に描く悲しい習性が働いてしまう。




 雑踏は、全体に雑多で、猥雑とさえ言えた。


 通行人の間を、からからと路面を鳴らしながら辻馬車ハンサムが行過ぎる。と思ったら、しゅっ、しゅっと白い蒸汽を吐き出して、蒸汽の力で動く自動車が通過する。


 空を見上げると、細長い飛行船が、朝の光を目映く反射してゆったりと飛行していた。




 ここでは中世と、近代が入り混じっていた。ぼけっとそれらを眺める市川たち三人の姿を、見咎める視線は、一つとしてなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ