表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
番宣《コーヒー・ブレイク》・その一
49/213

絵コンテ

 気がつくと、演出机にどっさりと絵コンテ用紙が山積みになっている。ペン立てには、ぎっしりと、愛用の2Bの鉛筆。一本を摘み上げ、机の左側に置いてある鉛筆削りに突っ込む。


 がりがりがりがり……と逞しく鉛筆削りは2Bの先端を飲み込んでいく。引き抜くと、当たり前のように先が尖っていた。


 鉛筆を凝視したまま木戸の指が、ぶるぶると震えていた。ぼきり! と鉛筆を手の中でへし折る。怒りの衝動が込み上げた。


「畜生! 誰の悪戯いたずらだ?」


 ドアに突進した。ドアはきっちりと、元の通りに戻っていた。いつ修理したんだ?

 がちゃり! とノブを掴んで外を目掛け、前も見ずに夢中になって飛び出す。

 が、呆気に取られ、立ち竦んだ。


 木戸の身体は元の演出部屋に立っていた。確かに、外に飛び出したはずなのに……。


 ノブを掴んだまま振り返る。

 演出部屋が見える。視線の先に、ドアのノブを掴んだ自分の背中が見えた。その自分の身体の先にもう一つの演出部屋があって、さらに視線の向こうに、またもう一人の自分の背中が見えて……。


 まるで合わせ鏡のように、無限に続いている。木戸はぞっとなって、ノブを離し、ドアを閉めた。

 これ以上、見続けていたら、気が変になってしまう。いや、もう、なっているのかもしれない……。

 ばたり、と音を立て、ドアを閉め、そのままへたへたと演出机の椅子に腰掛けた。


 頭を抱え、じっと待ち受ける。


 何も起きない。

 顔を挙げ、呟いた。


「判ったよ……やるよ、やりゃあ、いいんだろう?」


 ふーっ、と息を吸い込み、決意したように鉛筆を掴み、絵コンテ用紙を広げる。

 じいっ、と何も描いていない用紙を睨みつける。

 さらさら……と、鉛筆の先が絵コンテ用紙の表面を走る。




 描ける……!




 あれほど苦渋していた絵コンテが、今では嘘のようにすらすらと描ける。後から後からイメージが湧き、止まらない!




 木戸はもう、夢中だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ