方法
「なんてこった……」
ぺたりと地面に山田が座り込む。その横に、洋子が椅子の高さほどの木箱を見つけ、腰を下ろした。
二人とも呆然と市川を見詰めている。反論すら、する気力がなさそうだ。
「二人とも『蒸汽帝国』の原作を思い出してくれ! 原作の三人が、あの後、どうなったかを……」
洋子が空を見上げ、思い出しながら、ゆっくりと言葉を押し出す。
「確か……、警察の追及を躱すために、帝国軍に入隊するんだったわね。傭兵になるんじゃなかったかしら?」
山田が「うんうん」と何度も頷いた。
「そうだ、そうだ! 思い出してきたぞ。それから──えーと、どうなるんだっけ?」
頼りない口調で市川を見る。市川は首を振った。
「そんな目で、おれを見るなよ! おれだって一遍、軽く目を通しただけなんだから……。後で打ち合わせするつもりだったから、その時に木戸さんから詳しい説明を聞こうと思っていたんだ」
洋子が「ぽん」と手を叩いた。
「それで、平ちゃんと三村君。どうやって探すの? 市川君、あの二人をキャラクターなんかにしていないでしょ? もし、あの二人がこの世界にいるなら、あたしたちに見分けがつく?」
山田がにいっ、と笑った。
「それなら、方法があるぞ! おれたち、二人とも市川君の悪戯書きそのままだ。ならば、逆に考えれば、市川君があの二人の悪戯書きをすれば、おれたちに見分けがつく」




