主人公
三人は顔を見合わせた。
最初に口火を切ったのは洋子だった。
「三村君と、平ちゃんを探せって命令してたわね?」
「うむ」と山田が重々しく頷く。洋子が「平ちゃん」と言うのは、新庄プロデューサーの呼び名である。洋子だけが、気軽にその呼び名をつかう。
「しかし、どうやって?」
山田は腕を組んだ。市川は、恐る恐る推測を口にした。
「どう考えても、今までの出来事は『蒸汽帝国』の冒頭、数ページそのままだったよな……?」
いかにも厭そうに、山田と洋子は渋々同意する素振りを見せた。市川は先を続けた。
「となると、おれたちは『蒸汽帝国』の登場人物……しかも、主人公じゃないか、と思えてくる!」
「そんな馬鹿な!」
山田が両目を一杯に見開いて叫んだ。
「主人公は、とうに市川君が設定してあったじゃないか! あれは、どう見ても、おれたちとは似ても似つかない……」
市川は素早く言葉を差し挟んだ。
「そりゃそうだ。だけど、主人公は三人。旅の女剣士、盗賊、老人……悪いな、でも山田さんが【老人】の役割だと考えると、ぴったり表札が合うじゃないか」
市川の最後の台詞に、山田が「表札?」と問い返した。うんざりした様子で、洋子が訂正を入れる。
「平仄よ。市川君。もうちょっと、日本語を勉強しなきゃね」
市川は恥ずかしさに頬の火照るのを感じていた。難しい言葉は苦手だ! 照れ臭さに頭を掻き毟り、言葉を続ける。
「それに、冒頭の酒場での乱闘シーン。最後に警官隊が乱入して、主人公が逃げ出す展開も、同じだ! おれたちが主人公の役目を負わされているんだよ!」