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依頼
山田は宙を睨んで叫んだ。
「木戸監督ができないなら、なおさらおれたちにできるわけない! おれたちゃ、絵描きで、作家じゃないんだ!」
──あんたらしかおまへんのや。何しろ、『蒸汽帝国』の世界を一等、理解しておるのは、あんたらやからな。あんたら三人と、三村はん。新庄はんの五人で、ストーリーを続けて貰いたいねん。
市川は山田の真似をして宙を睨みつけ、叫んだ。
「どうやって? どうすりゃいいんだ?」
──何でもええ。あんたらのやりたいように、やりなはれ。何でもええから、ジタバタすれば、それがストーリーになるんや……。
〝声〟が徐々に遠ざかる気配がして、市川は慌てて喚いた。
「おい、待て! そんな無責任な……! それに、木戸さんは、どうなってる? なぜ、木戸さんの名前が出てこない?」
──あん人には、別の役目がおます……。
謎めいた口調を最後に、〝声〟はふっつりと跡絶えた。
がちゃーん、どしーんと重々しい機械音が戻ってくる。