センス
「何を言ってんのよっ!」
相手の女剣士は叫ぶと、素早い動きでテーブルの肉をひっ攫い、口に咥える。
洋子は「あっ!」と叫ぶと、相手に掴み掛かった。たちまち二人の間で、取っ組み合いが起きる。
わあ! と店内が騒然となり、客たちが一斉に立ち上がって歓声を上げた。全員、興味津々といった表情を浮かべ、拍手をしている男も見受けられる。
「おい、止めなきゃ!」
山田が立ち上がって、市川も釣られたように椅子を蹴って神輿を上げた。あたふたと山田は取っ組み合いを続けている二人の女に割り込んだ。
「止めろ! おい、乱暴はよせ!」
しかし山田の言葉はてんで二人には届かない。むしろ火に油を注ぐ結果になって、洋子は山田の頬を「ぱしーん!」と音高くひっぱたく。
山田は踵を中心に独楽のように回ると、ずでーんと音高く引っくり返ってしまった。
「山田さん!」
市川が慌てて近寄ると、山田は床に大の字になって伸び、頭の上にはキラキラ星と、ピーチクパーチク騒がしく小鳥が囀って、くるくると円を描いている。
やりすぎだ! 多分、木戸監督のセンスだろうが、悪ノリしすぎだよ……。
市川は情けなくなった。