あぶない水着
二人の女剣士は、店の出入口を塞ぐ格好で睨みあっている。視線は険しく、二人の間には、ぱちぱちと火花が散っているようだった。
いや、本当に散っていた。
二人の眼球からは、空中を繋ぐように火花が飛び散り、背後の背景は、怒りの炎を象徴したイメージとなっている。アニメでは、よく見られるテクニックだ。
市川は呆気に取られ「本当にアニメの世界に入っちまってる!」と驚愕していた。
一人は市川が悪戯に設定した、宮元洋子の女剣士姿である。極端に布地を節約した──つまり水着とほぼ同じような衣装を身に着けていて、胸の谷間がありありと見えている。
市川は洋子の胸を、実物よりは二倍ほど強調して描いていたから、ほとんど顔と同じくらいの巨大な丸みが突き出している。そんなに大きいのに、重力に抗して、ぐいっと盛り上がっている眺めは、驚くべきものだ。
もう一人の女剣士もまた、洋子に負けず劣らず……と言うべきなのか? ともかく最小限の布地で身体を覆っている。
細い紐に、小さな三角布がついただけの衣装で、布地の足りない分をごちゃごちゃとイヤリングや、腕輪、脚輪などで補っている印象だ。
「その肉は、あたしのもんだからね!」
洋子がテーブルの上で美味そうな湯気を立てている肉の固まりを指さして叫んだ。
なんだ、食いものの争いか……。市川は思わず、心中ズッコケてしまった。
山田を見ると、呆れた内心を表すためか、大きな汗が色トレスで描きこまれ、顔の上半分がブルーのグラディーションになっている。
アニメのギャグ表現で、「ちょっとセンスが古いな」と市川は思った。
多分、自分も同じような表情を浮かべていると思うと、うんざりする。