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アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
エンディング
211/213

乾杯

 新庄が高々とビールの入ったコップを掲げ、乾杯の音頭を取る。

「『蒸汽帝国』全話の完全納品、つつが無く終了致しました! これもひとえに、皆々様の御尽力、御努力の賜物でありまして、不肖、【タップ】代表取締役、新庄平助……」


「おいおい!」と、木戸が、まぜかえす。

「そんな長々と乾杯の音頭を続けられたら、ビールの気が抜けちまうじゃないか!」


 新庄は苦笑した。肩を竦め「乾杯!」と大声を上げる。




「乾杯……」




 全員が和し、ビールを飲み干した。

 シリーズの終了を祝した、打ち上げ会である。たかがワン・クール制作しただけで、打ち上げとは大袈裟かもしれないが、今回の『蒸汽帝国』は【タップ】が元請となって、制作した初のシリーズとあって、新庄は張り切って会を催したのだった。

 場所は【タップ】のすぐ近くにある、小さな居酒屋の二階。ささやか過ぎる会場だが、プロデューサーの大役を果たした新庄には、大いに意味があるようであった。


 ちびちびとビールを啜っている市川に、山田が近づき、声を掛けた。

「市川君、お目出とう!」


 市川は山田に向かって、ちょっと会釈する。山田の祝辞に、ちょっと照れてみせる。

「ああ、どうも……」


 山田は、市川の隣に座る相手に目配せする。

「聞いたぞ、結婚するんだってな? 式はいつだい?」


 隣に座っていた洋子が、首を振った。

「まだ決めてないの。この人が……」



 おっほほほ……と、山田は妙な笑い声を上げた。



「〝この人〟だって! いや、当てられたなあ……! まあ、いい。君らなら、いい夫婦になれるよ」

 山田の心のこもった言葉に、市川と洋子は「ありがとう」と素直に頭を下げる。市川と洋子は、いつしかお互いを運命の相手と認め合い、婚約をしたのだった。


 ちらりと談笑し合っている木戸と新庄を見やり、山田は市川に向き直った。表情が一変して、真剣になっている。

「あのな、おれ、ちょっとビリケンの由来について調べてみたんだよ」

 市川はやや仰け反る姿勢になって、山田の顔を見詰め返した。

「ビリケンって、【タップ】の屋上に祀られている神様だろ? 何か気になったのか?」


「うん」と山田は生返事をする。

「実はな、ビリケンというのは……」


「何よう、あれがあたしなの? ほーんと、純一ってセンスないわねえ!」

 言いかけた山田の言葉を、いきなりの大声がさえぎった。がらがらと辺りをはばからない、機関銃のような喚き声である。

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