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アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
最終話 痛撃の最終チェック・納品!
206/213

帰還

「待って下さい!」

 凛とした、三村の声が、その場を支配していた。

「僕は帰りません! この世界に留まります!」


「三村君!」

 市川たちは仰天して叫んだ。


「今はもう、三村健介ではない。僕はアラン王子だ!」




 三村は──いや、アラン王子は、王族の威厳を保ち、きりっとした表情で答えていた。

 一同の凝視を浴び、不意に三村の顔に、以前の気弱げな表情が浮かぶ。

「御免なさい。でも、僕はこの世界がぴったりくる……そんな気がしてならないんです。僕は以前は、自分は誰か、なぜここにいるのか、ずっと迷っていた……。生きているだけで、他人に迷惑を架けている……そう感じていました。でも、こっちへ来てからは、本当に生きていると感じている!」

 三村は再び固い決意の表情になった。

「ぼくは帰りません! ここで、アラン王子として生きていきます!」


 市川は宙に視線を向け、叫んだ。

「どうすんだ? 三村は帰らないと言っているぜ!」




 ──しょうがおまへん。まあ、三村はんがおらんでも、何とかなりまっさ。それは、方便ちゅうもんで……。




 ごおごおと、風は大広間を荒れ狂う。真向かいから吹きつける風に、市川は目を半ば閉じざるを得なかった。

「市川君……。努!」

 洋子が手を伸ばしてくる。市川は、洋子の手を握りしめた。

「宮元さん?」

「洋子でいいわよ……」

 洋子が耳もとで囁く。新庄が二人を見て、妙な表情を浮かべた。




 ──さあ、あんたら、【タップ】へ御帰還や。ただし、あんたらの記憶は、消去させてもらいまっさ!




 今度こそ、全員が唖然呆然となった。

「何だと?」「そんな勝手な……」「記憶を消すってのか……?」

〝声〟は、あっさりと答える。





 ──しゃあないやないか! この世界での冒険の記憶を持たれたまま帰られたら、わてが干渉した、ちゅう事実が残るやろ。それは、まずいよってな……。ほな、皆様がたも、ご苦労はん……。




 記憶を無くす……。

 市川は思わず、洋子の身体を引き寄せ、全力で抱き寄せた。

 この思いも消えてしまうのか?


 風は益々びゅうびゅうと強まり、市川は意識を薄れさせていった……。

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