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アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
最終話 痛撃の最終チェック・納品!
204/213

大広間

 逃走した【導師】を追いかけ、市川たちは足音も高く、王宮の大広間に駆け込んだ。



 いた!



【導師】は、一同に背を向け、うずくまっている。もはや、通常の人間と同じほどだ。


「【導師】様……」


 片隅から、恐る恐る、大公以下バートル国の人々が姿を表す。大公の横には、エリカ姫が付き従っている。

 ゆっくりと【導師】が立ち上がった。ゆらりと、市川たちを振り向く。


「あんたは……!」


 呆然と【導師】の顔を見て、市川は叫んでいた。【導師】の顔は、すっかり様変わりしていた。


「木戸さん……」

 新庄が信じられないと言うように、首を振りながら呟く。


「やあ……」

 少し照れくさそうに、【導師】の衣装を身に纏った木戸純一は挨拶をする。

 もはや、そこには【導師】の姿は欠片もない。【タップ】の演出部屋で最後に見かけた木戸の姿があった。


 いや、違っていた。木戸は市川たちと同じ、アニメのキャラクターになっていたのだ。


「やったぞ! おれも『蒸汽帝国』の世界へ来られたんだ!」

 木戸は両拳を握りしめ、感動に打ち震える様子で呟いている。さっと木戸の視線が、大公の横に立っているエリカ姫へ向けられた。


「絵里香……」


 エリカ姫の顔が、蒼白になった。

 三村が無言でエリカ姫の側に近寄る。エリカ姫は無意識に三村の腕に自分の腕を預け、じっと木戸の凝視に耐えていた。

 木戸の肩が僅かに下がった。

 市川は呼びかけた。


「木戸さん、どういう訳だ? なぜ、あんたがここにいるんだ?」


 木戸は、ゆるゆると首を振る。

「ずっと演出部屋で絵コンテを切っていた……。長かったなあ……。最初は、自分で絵コンテの内容を考えていたと思っていたんだが、そのうち、おれの考えじゃなく、あんたらの冒険をおれは書き写しているだけじゃないか、と思い始めて来たんだ!」


 市川たちは、思わず顔を見合わせた。山田はゆっくりと話し始めた。


「それは、おれたちも同じだ。おれたちの冒険は、あんたの描いた絵コンテそのままに、動かされているんじゃないかと、思っていた。が、どちらも違うようだな……」


 洋子が鋭く声を掛ける。

「それで、どうして木戸さんが、ここにいるわけ? 木戸さんは演出部屋にいたって、言っていたわよね?」

「そうなんだ」


 木戸は軽く頷いた。

「コンテを描いているうち、おれもこっちに来たくなってね……。君たちが羨ましかった……。で、おれは考えた。絵コンテの内容を変えたらどうか、と! おれの考えは正しかった! おれは、ここにいる!」

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