装備
「戦闘用意!」
三村の厳しい命令が響く。市川はさっと上体を傾け、衝撃に備える。スクリーンの向こうの【導師】が、腕を横に振って拳を振り上げた。
がつん!
恐ろしい衝撃が、操縦席を貫いていた。
がく、がくと市川は揺さぶられ、目の前に火花が飛び散った。スクリーンが乱れ、一瞬空白になる。
が、すぐに復旧した。するとスクリーン一杯に、【導師】の顔が迫っている。
【導師】は怒りに満ち満ちた表情で、こちらを睨み据えている。いや、怒りの表情が、固定されていると表現したほうが当たっている。怒り以外の表情を、仮面となった【導師】の顔面は、持ち合わせていないようだ。
市川は操縦レバーに手を掛けた。市川の分担は、蒸汽ロボの両腕である。山田が下半身の制御を受け持ち、ロボットの前進、後退などを担当する。新庄と洋子が、ロボットの火器管制を担当し、三村は全体の指揮だ。
蒸汽ロボの腕が上がった。市川は目の前の【導師】に向け、右腕を突き出し、パンチを繰り出す。
ぐわん! と虚ろな音がして、ロボットの右腕拳が、【導師】の顔にめり込んだ!
くらっ、と【導師】の顔が天を向き、足が踏鞴を踏んだ。うまく行った!
効いている……のか?
ぶるん、と【導師】は首を振ると、ぐいっと身構え、大口を開く。
ぐーっ、と息を吸い込み、吐き出す。
ごおおおおっ、と音を立て、【導師】の口から、真っ赤な火炎が噴き出した。「わあ!」と、操縦席の四人は一斉に悲鳴を上げていた。が、三村の声はない。
スクリーンを見ると、市川含め、四人は【導師】の炎が吹き掛かった瞬間、口を一杯に開け、悲鳴を上げていた。
ところが三村は、まるで頓着せず、真っ直ぐ前を見詰める姿勢を崩していない。
まったく、王者の貫禄だ。市川は密かに、敬意を感じていた。
新庄が喚いていた。
「畜生! こっちも、お返しだ!」
洋子が答える。
「当ったり前よ! 平ちゃん、ロボのミサイル発射よ!」
ミサイル? そんなの、搭載していたっけ?