光
木戸の背後のガラス戸に、一瞬、屋上の祠がシルエットで浮かび上がる。
最後に木戸は天井を見上げ、全身全霊を込めて叫んでいた。
「お願いだ! この苦境を誰か、救ってくれ! 神でも悪魔でも構わねえっ! 頼む、助けてくれ……!」
その時、木戸の背後の窓ガラスが一際強く、真っ白に輝いた。まるで真昼のような明るさで、眩しさに市川は目を閉じようとした。
が、瞼はぴくりとも動かない。
気がつくと、市川の全身は、完全に凍り付いていた。指一本、動かせない。
瞬きもしない強烈な白い光が、部屋全体を照らし出している。眼底が焼き尽くされるような光量に関わらず、市川には、はっきりと周囲の総ての物が見てとれた。まるで一枚の写真を見ているようだった。
視界の隅に、他の四人が同じように凍り付いているのを認める。市川の視線は真っ直ぐ木戸に向けられているので、四人の表情までは判らない。
何だ、何が起きたんだ?
不思議と恐怖は感じなかった。異常な状況にあるのに、市川は冷静に事態を見守っている自分を奇妙に思っていた。何か、自分が二つに別れ、もう一人の自分を観察しているような気分であった。
と、〝声〟が聞こえてきた。