発表
後甲板の扉が開かれ、そこからはバートル軍の兵士たちが、ぞろぞろと吐き出される。
取り囲んでいたバートル国の騎馬隊に、動揺が走った。まさか、味方が現れるとは思っていなかったのだろう。
しかも、吐き出されたバートル軍の兵士たちは皆、ドーデン軍の贈り物を大量に携えている。兵士たちの顔には満面の笑みが浮かび、騎馬隊を見て「やあやあ!」と手を振った。
「お前たち、どうしたのだ?」
騎馬隊の隊長らしき男が、歩み寄った兵士たちに噛み付きそうな勢いで詰問する。兵士たちは、大きく頷いた。
「戦いは止めになっただ! これ、ドーデンの王子様からの贈り物だあよ!」
贈り物の包みを掲げる兵士に、騎馬隊の兵士たちは驚きの声を上げた。
「何だと……? 貴様たち、ドーデンの奴らに買収されたのか? 使命を忘れたのか? エリカ姫を救出するため……」
騎馬隊の詰問を、兵士たちは途中で遮った。
「その、お姫様だがね、一緒にいらっしゃっておられるだ! ほれ!」
騎馬隊は身を捩って、飛行船に視線をやる。
その時、三村を先頭に、市川たちはエリカ姫を伴い、外へと出て行った。エリカ姫の出現に、騎馬隊の兵士たちは歓声を上げていた。
エリカ姫は三村の腕をしっかりと抱き寄せ、呆然と立ち竦んでいる騎馬隊の全員に向かって頷くと、腕を上げて手を振り返す。
艶やかな笑みを浮かべ、エリカ姫は全員に向かって声を上げた。エリカ姫の声は、朗々と透き通って、全員の耳に達していた。
「皆さん! わたくしは、この度、正式にドーデン帝国の第五王子、アラン殿下との婚約を発表いたします。ついてはバートル国と、ドーデン帝国にあった誤解は消滅し、和平が結ばれる予定です!」
三村が後を引き継いだ。
「姫の仰るように、ドーデン帝国と、貴国の僅かな擦れ違いは解消されました。ドーデン帝国は、バートル国に対し、生活向上のための技術援助──様々な蒸汽製品の提供、その他、蒸汽動力炉の建設、資金の無償援助などを約束します。我がドーデン帝国と、バートル国は、共に発展するのです!」