雷鳴
がたん、と背中を部屋の壁に押し付け、ずるずると膝を落とし尻餅をつくように座り込む。
この中で最も絶望感を抱いているのは、新庄だろうと市川は想像した。全責任が新庄の肩に圧し掛かっているのだ。
市川は推測するに、もしこのまま放映に穴が開くと、新庄は放送局に対し〝ペナルティ〟を支払う義務が生じる。そうなれば【タップ】は終わりだ!
放送事故と同じ扱いの〝ペナルティ〟は、【タップ】の支払い能力を越えている。
ぱ! と照明が完全に掻き消えた。
停電か? 市川は暗闇で緊張感に身を強張らせる。
ぴしゃーんっ! と物凄い音とともに、窓ガラスが真っ白に輝いた。
わあっ! と木戸を除く一同は頭を抱える。
窓ガラスから数回、稲光が演出部屋の内部を照らし出していた。
ふらふらと、木戸は漂うような動きで立ち上がる。ぶつぶつと口の中で呟く木戸の声が、なぜか市川の耳に、はっきりと聞き取れていた。
「どうしても、おれは自分でシナリオ、絵コンテを担当したかった……。上手く行けば、それでおれは、もう一度、漫画家に復帰できると思ったんだ……。アニメ業界に潜り込んだけど、おれの本来の場所は漫画だと決めていた。だけど、どうしても描けない……。おれにはストーリーを作る能力がないって、厭になるほど判った……」
木戸の言葉の合間、合間に「ぐわらぐわら」「がらがら」「ぴしゃーんっ」と、何度も雷鳴が轟いていた。その度に窓から真っ白な光が差し込み、木戸の全身をシルエットに浮かび上がらせる。