189/213
オタク
これからの予想では──つまり、市川が設定した【導師】のキャラクターを木戸監督が活用すればの話だが──バートル国を精神的に支配する【導師】との対決が控えている。
予想される【導師】との対決には、市川はもう一つのギミックを設定していた。渡された設定に色指定するとき、洋子は心底つくづく呆れ果てたといった様子で、力なく首を振ったものだ。
「本当、あんたって、オタクよね! まあ、アニメーターってのが、オタクの成れの果てだから、しかたないのかもしれないけど」
洋子の手酷い感想を、市川はまるっきり気にしないでいられた。
そりゃそうさ!
市川は洋子に向け、胸を張った。
オタクじゃなけりゃ、アニメーターなんて、やってられっかい!
それに市川は、自分がアニメーターを目指すきっかけとなった夢が、いよいよ実現しそうになって、ワクワクしていた。
三村と腕を組んだエリカ姫が、ちらりと市川の顔を見て、妙な表情を浮かべる。
市川は、自分の顔がでれでれになっているんだろうと、想像していた。