朝日
夜明けと同時に、市川たちを乗せた空中空母は、ドーデン国の中心部に接近していた。スクリーンには、首都の城下町が朝の光に照らされ、瓦屋根がきらきらと朝日を反射している様子が、克明に映し出されている。
「着陸準備! 飛行船離脱! 戦闘員は、各飛行船へ移乗せよ!」
三村は司令長官席から、ゆらりと立ち上がる。三村の動作に、ボルタ准将は驚きの表情を浮かべ、話し掛けた。
「王子殿下! どこへ?」
三村はエリカ姫の腕を取り、微かに顎を引いて准将を見詰め、答えた。
「僕も、上陸部隊と共にまいります」
「何ですと!」
ボルタは咆哮した。
「いけません! 王子が御自ら前線へ御出馬とは、前例はありません! すこぶる危険であります。このボルタ、身命に賭けても、王子殿下をお止め致しますぞ!」
三村は静かな視線で、じっとボルタ准将の目を見つめ返した。ボルタ准将はふるふると唇を震わせ、さらに言い募る様子を見せた。
が、やがてボルタ准将は、がくりと首を垂れた。三村の無言の気迫に、押し切られた格好である。
「承知致しました……。どうか、御無事で……」
三村は、爽やかな笑みを見せる。
「僕には頼りがいのある護衛がついていますから、将軍閣下の御心配は無用です」
三村は言葉を切ると、さっと視線を市川たちへ向ける。頷き、無言の合図を送る。
市川たちも、頷き返した。すべて予定の行動である。
三村がマントを翻し、エリカ姫を伴い、格納されている飛行船への通路を歩き出すと、市川、山田、洋子、新庄の四人は後に続く。