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アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
#12 開戦! カッティング
183/213

喪失

 何も起きなかった!


 魔法使いたちの振り上げた杖の先からは、微かな煙や、ぱちぱちと静電気のような音がするだけである。恐ろしげな電光や、燃え盛る火球など、一切、何一つ出てこない。

 魔法使いたちは、見るからに狼狽し、それまで深く被っていたフードを勢いよく撥ね上げていた。

 フードから出現した魔法使いたちの顔は、奇妙に同じように見える。まるで同じ鋳型から造られた、同じ顔に見えた。


 禁欲的な表情、げっそりとけた頬。頭はつるつるに剃り上げていて、両目は狂的な光を湛えている。


「ば、馬鹿なっ!」


 一人の魔法使いが呻いた。剃り上げた頭頂部から、べっとりと大量の汗が噴き出していた。

 背後のバートル軍の兵士たちが、そろりと魔法使いたちに迫ってきた。視線は魔法使いたちが構えている杖に注がれている。


「どうしたのけ? あんたら、いつもの力は、どうしたんだあ?」


 兵士の一人が、わざとらしいのんびりとした口調で声を掛けた。顔には嘲りの表情が浮かんでいる。

 魔法使いの一人が、満面を朱に染め、怒りの形相も物凄く、兵士たちを睨み据えた。蟀谷には、ぴくぴくと太い血管が浮いている。

 兵士たちは、魔法使いの怒りの視線に、僅かに浮き足立った。


「くわ──っ!」


 魔法使いは絶叫し、杖を味方の兵士たちに向けた。



 ぽ……!



 目に見えるか、見えないか、判らないほど微かな煙が、杖の先から立ち上がる。魔法使いは焦り、何度も杖を振るが、効果は一切なかった。




 これが市川の考えた「最終兵器」だ!

 バートル軍の兵士に、物欲を生じさせた結果、魔法使いたちへの忠誠心が揺らいだ。欲望がバートル軍兵士たちを堕落させ、精神への支配から脱しさせたのだ。




「あんたら、力がなくなったんだ! もう、魔法使いでも何でもねえ!」

 嬉しげな歓声が、兵士たちから上がる。兵士たちの視線には、憎しみが浮かんでいた。

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