クイズ
「おらに、呉れるっちゅうのけ?」
バドは田舎丸出しの喋り方で、トミーに食いつくように話しかける。もはや、当初のおずおずとした態度はかなぐり捨てて、爛々と目を輝かせ、目の前の品々に見入っていた。
トミーは、大きく頷いて答える。
「もちろんですとも! バドさん、奥様はいらっしゃるのですか?」
バドは、無言で頷く。視線は数々の商品に張り付いたまま、動かない。もはや、頭の中は、目の前の品々で一杯のようだ。
「それは、よござんした! 奥様に、これらの品々をプレゼントしたら、さぞお喜びなさるでしょうね?」
じろり、とバドはトミーを睨みつけた。
「おれに呉れるっちゅう話だが……」
「そこです! ただし、タダという訳にはいきませんよ! 何、簡単な質問に答えていただくだけで結構!」
「質問……?」
バドは渋面を作った。さっと顔色が優れなくなる。
トミーは朗らかに話し掛けた。
「難しい質問じゃありません。あなたなら、簡単に答えられる質問です」
バドは、たじたじとなった。トミーの笑顔がさらに邪悪さを増した。
「第一問! 犬が西向けば、尾は?」
「東!」
「素晴らしい! 第二問! 蛙ぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ! ぴょこは、いくつ?」
バドは口の中で数を数えて答えた。
「七つ……?」
「ご名答! さて、最後の質問です! 今日は、何曜日だったでしょう?」
「水曜日……かな?」
バドは自信が全然なさそうに答える。
トミーは、ぴょんと飛び上がると、空中で踵を三度、打ち合わせ、床に着地してくるりと身を回転させた。
「やりました! バドさん、ああたは、全問正解です! ここにある総ての賞品は、今から、ああたのもので御座います!」
トミーは両腕を伸ばし、バドの手をがっちりと握りしめて、何度も上下に動かした。バドはぽーっ、と上気し、目も虚ろになっている。
「ほ、本当けえ? 本当に、おらのものになっただかね?」
バドの表情が、一瞬にして貪欲なものになった。それだけではない。ステージを見上げている、他の兵士たちの顔にも、物欲しそうな感情が表れている。
トミーは兵士たちに向き直り、大声で叫んだ。
「皆さーん! バドさんのように、帝国の蒸汽家庭用品を欲しいと仰る方は、おられませんか? 簡単な質問に答えて頂ければ、これらの品々は、あなた方の物ですぞ!」