戦い
バートル軍の前衛が、ドーデン帝国の国境警備軍と衝突し、戦闘が始まる。丘陵の向こうからは、馬に乗った重装騎兵が、津波のように襲い掛かり、さらに後方には魔法使いたちが控えていた。
どかどかと地面を震わせ、岩の巨人が飛び込んできた。手にした棍棒を、唸りを上げて振り回す。棍棒の当たった先は、瞬時に粉々に砕け散る。
ドーデン軍は応戦を開始したが、帝国の誇る近代兵器は、バートル軍の奇妙な軍勢にはまったく効果がなかった。
銃弾を撃ち込んでも、岩の巨人の身体には、まったく効果はなく、跳ね返されるだけだ。
タツノオトシゴの竜騎兵は、ぴょんぴょんと地面を飛び跳ね、銃口の狙いがつけられない。数騎の竜騎兵が塹壕に飛び込み、タツノオトシゴに跨った兵士は、手にした湾曲した刀を滅茶苦茶に振り回す。たちまち、辺りに血飛沫が跳ね飛んだ!
絶叫が、画面の向こうから聞こえる。
ボルト提督は、画面を睨んで歯噛みした。
「糞! 生意気な……!」
提督の近くの司令長官席には、三村がゆったりと座っている。椅子の肘掛けに置いた三村の腕に、寄り添うエリカ姫がそっと手を重ねていた。ボルト提督は、二人の姿を眼にし、慌てて言い直す。
「いや! 敵とはいえ、中々に奮闘しておりますな! 感心、感心……!」
無理矢理どうにか、笑顔を作る。
ボルトは三村に向かい、訊ねかけた。
「アラン王子殿下……。司令長官として、総攻撃のご命令を賜りたく存じます」
三村はボルト提督に顔を向け、頷いた。
「よろしくお願いします。提督」
ボルトの顔が、興奮に赤らんだ。
さっと艦橋に向き直り、全身の力を振り絞って声を張り上げる。
「全軍、総攻撃を開始せよ!」
提督の号令により、艦橋全体にぴん、と緊張が張り詰めた。一斉に要員が手元の送話装置を取り上げ、あらかじめ打ち合わせしておいた命令を次々と部隊に伝達する。艦橋は一時に騒然となり、今までの静けさは、まるで、この時のために溜めていたかのようだ。
市川は艦橋の真ん中に立ち、息を呑んでいた。
いよいよだ……。
いよいよ、本格的な戦いが始まる。