科学考証
会合地点から反転し、ドーデン軍は勇躍、バートル国との戦闘が予想される会戦地を目指して進軍を続けていた。
偵察機を先行させ、バートル国はドーデン帝国との国境付近に集結しつつあるのを確認する。おそらく国境地帯の山岳部を掩蔽として布陣するのだろう。
偵察機は空中から、バートル国の進軍の様子を克明に撮影して、無線で送信してきた。
泥縄ではあるが、市川と山田は、ドーデン帝国の設定を、社会風俗は十九世紀末で、科学技術は二十世紀始めという設定から、もう少し進んだ、二十世紀中葉頃に設定し直していた。
いや、もしかしたら、もっと進んでいるかもしれない。
二人がいる空中空母の艦橋は、完全な閉鎖式で、外部の眺めは、空母に何箇所も設置されている、テレビ・カメラが撮影した映像を、巨大な平面スクリーンに投影する方式を採用している。
しかもカラーだ! スクリーンのテクノロジーだけ見れば、明らかに二十世紀末の液晶モニター技術が不可欠である。科学考証に突っ込みを入れたがるマニアの「ほほお……平面スクリーンですか!」という嘲りの声が、市川には聞こえてくるが、目を瞑る。
周りの計器は、わざと一九五〇年代のSF映画から脱け出たような、丸い針式で、クラシックな趣きを演出している。しかし艦橋の大部分を占める巨大モニターには、無数の数値や、グラフが外部の景色に同時に表示されていて、そこだけはいかにも、今風のSFアニメである。
山田はあくまで十九世紀風の、帆船の内部のような艦橋にすべきだと主張したのだが、やはり、このほうが、実際にアニメになった場合、見栄えがいい。さらにぶっちゃけて内情を曝すと、このような巨大スクリーンを設定しておけば、レイアウトを兼用して、作画枚数を節約できる。