表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
#2 戦慄の文芸担当
17/213

演出机

 演出部屋は、四畳半ほどの広さしかない。床はリノリウム張りで、上に薄手のカーペットを敷き詰めている。


 ドア近くに、透過台を組み込んだ演出机があり、反対側に数個のキャビネット、スチール棚が、ごちゃごちゃと立ち並んでいる。

 棚の一つには、木戸が持ち込んだDVD再生機とモニターがあって、木戸は時々このモニターで、興味があるアニメや、特撮映像を楽しんでいた。木戸はオタクであった。


 演出机の棚には『蒸汽帝国』のフィギアが飾ってある。『蒸汽帝国』が伝説の漫画として神格化されると同時に、フィギアが発売され、コミケなどで販売されている。木戸は大喜びで見本を受け取り、自慢していた。



 ずんぐりとした身体つきに、薄汚れたTシャツ、ぴちぴちのジーパンという格好で、木戸は微動だにせず、立ち尽くしている。四角い顔に、小さな銀縁の眼鏡を架けている。顎には薄っすらと無精髭が浮いていた。落ち窪んだ瞳に、憔悴しきった色が浮かんでいた。



 ずい、と新庄が木戸の目の前に立ちはだかった。


「木戸さんっ! 説明してくれますね?」


 言葉は丁寧だが、ぶっすり突き刺すような口調である。

 再度、同じ言葉を繰り返され、木戸は「びくっ」と身を震わせた。虚ろな視線が不意にはっきりとして、目の前の新庄を認識したかのようだ。


「新庄さん……」


 わくわくと唇が震えている。新庄は口調を変え、穏やかに話し掛けた。


「どうしたんだ? 今夜、絵コンテ打ちなんだろう?」


 市川は視線を動かし、木戸の演出机に目を留めた。絵コンテ用紙が数枚、描きかけになっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ