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観戦
エリカは端然と笑い掛けた。
「いいのですよ、提督閣下! こうなったのも、わたくしの不徳……。悔やんでも、悔やみきれませぬ。今、願うのは、戦いが早く終わって、再び両国が友好を取り戻すその日が来るよう祈っています」
背後に控えていた市川と、山田は素早く視線を交わし合った。
「どう思う、山田さん?」
市川の問い掛けに、山田はジロリと横目で睨んできた。
「どう思うって、何がだよ?」
市川は顎で、将軍を指し示す。
「あの爺さん、完全に普通の戦いが待っていると考えているらしいな。おれたちの設定した兵器が本当に装備されているなら、あんな言葉は出ないはずだ」
山田は驚きに目を見開いた。
「それじゃ、おれたちの設定は無駄だったと言うのか? あの兵器は、実際には使われないと、君は主張するのかい?」
市川は微かに首を振った。
「判らねえ……本当に、どうなるのか、おれには、さっぱり判らないんだ……」
とにかく戦いが始まるまでは、何が起きるか誰にも判らない……。
市川は密かに唇を噛みしめていた。