将軍
「アラン王子殿下、ご来臨――っ!」
三村が艦橋に足を踏み込むと同時に、入口近くに控えていた議杖兵が、手にした爵丈の先を、とん、と床に叩いて叫んだ。
途端に、さっと艦橋に緊張感が走り、全員が起立して三村を迎え入れる。
「ああ、そのまま任務を続けてください」
三村は鷹揚な仕草で頷くと、悠然と艦橋の真ん中に進み出た。三村の横には、相変わらずエリカ姫が従っている。
歩み寄った三村に、どっしりとした体躯の、真っ白な揉み上げを生やした、提督の階級章をつけた老人が近づいてきた。慇懃な仕草で一礼して、老人はさっと敬礼をする。
「帝国空軍、空中空母艦長、ボルタ准将であります! アラン王子殿下の御来光を賜り、恐悦至極で御座います!」
「よろしく……」
短く答え、三村は答礼を返した。
ボルタと名乗った老人は、三村の顔を見てほくほく顔になった。嬉しげに肩を揺すり、歌うように話し掛けた。
「我がドーデン帝国の空軍、陸軍の精鋭が集結いたしましたぞ! バートル国など、一捻りで負かしてしまいましょうぞ!」
提督の言葉に、三村は少し眉を顰めた。
「准将……。わたくしは、できるなら、バートル国とは友好を取り戻したく、思っているのです。それに、ここにおわすのは、バートル国のエリカ姫ですぞ! お言葉に気をつけていただきたい!」
ボルタ将軍は、目に見えて狼狽した。顔色が真っ赤に染まり、ふつふつと顔に汗が吹き出して全身を硬直させる。
「そ、それは……まことに……失礼……」
しどろもどろになる。