出現
船窓に見えてきた帝国空軍を目にし、市川は信じられない思いに、背筋に戦慄が走るのを感じていた。
本当に出現した!
徹夜で市川と山田はドーデン帝国と、バートル国の戦備・装備一式を設定していた。設定されたメカ設定に、洋子が色を指定して、三村が受け取り木戸のOKサインが記されて戻ってきて、ようやく一段落したと安堵した。その一方で、本当に存在するようになるのか、一抹の疑いは拭いきれていなかった。
空中に浮遊する帝国空軍で、一番よく目立つのは、空中空母である。現在、市川たちが乗り込んでいる飛行船を、十隻も格納できる巨大な円盤型の飛行船である。円盤型の船体下部に、放射状に飛行船が格納される仕組みだ。
空母の周りには、護衛のための飛行機が旋回している。空中空母の上部は飛行甲板になっていて、小型の飛行機を発着できるように、カタパルトが装備されている。
空母の背後には、陸軍を運ぶ輸送飛行船の群れが続いている。ずんぐりとした船体で、内部には戦車や、装甲車などを格納でき、もちろん兵士も満載できる。
市川たちの乗り込む飛行船が空母に接近し、格納場所に接舷すると、内部の通路が繋がって、空母に直で行き来できる状態になる。
三村――アラン王子を先頭に、飛行船側から空母内部へと進むと、そこは艦橋だ。
艦橋には、無数の職員が忙しげに駆け回り、びっしりと並んだ無数の計器を真剣な表情で見入り、数値を手元のメモに素早く書きとめている。
向こうでは多分、航法部であろう、巨大な机に地図が広げられ、多数の航法士が定規と、コンパスを手に、航路を書き込んでいる。
艦橋には百人近くの人数が詰め込んでいるに関わらず、ほとんど雑音が聞こえない。みな、額を寄せ合い、囁くように各々の書きとめた数値を報告し合っている。