部屋
エリカ姫が、バートル国の設定もして欲しいと依頼してきた――との市川の報告に、山田は腕組みをして顎に手をやった。
山田の仕草を見て、市川は典型的なアニメの、「考え込む」動作だなと思った。
実写なら、表情の微妙な変化で登場人物の感情を表現できる。だが、アニメではこうして、いかにも考え込んでいるような仕草をさせないと、視聴者に伝わらない。知らず知らず、自分も、同じような仕草をしているのだろうか。
二人の相談している部屋は、アラン王子の隣部屋である。飛行船の隅から隅まで探し回って、ようやく見つけてきた机を二つ運び込み、即席の仕事部屋にしている。採光は大き目の船窓があるので問題ないが、夜まで作業する予定で、電灯も持ち込んでいる。
壁には、いかにも王族専用飛行船らしく、ドーデン帝国歴代の皇帝、皇后などの肖像画が麗々しく飾られていた。
もちろん、この部屋も、あらかじめ山田に設定させ、肖像画のキャラクター設定も市川が描いている。だから部屋が出現したのだ。
市川は、設定をすると現実のものになる現象に、すっかり慣れてきていた。
「どうする? ドーデン帝国の武器、装備だけでも、相当な量を描かないとならないんだろ。市川君、一人でやれるかね?」
山田の問い掛けに、市川は頷いた。市川の顔を見て、山田は眉を上げた。
「なんだい? 何か、魂胆がありそうだな」
市川は山田に向け、素知らぬ顔を保ちつつ、返事をする。
「うん。ドーデン側のメカ設定、山田さんに頼みたいんだ」
山田の表情が、驚きに弾ける。
「おれに、か? 本気か、市川君」
「山田さん、メカも得意だろ?」
「ん、まあ……な!」
山田も市川の真似をして、強いて無表情を装っている。が、目は期待に輝いている。