香水
エリカが艶やかな笑みを浮かべた。その場に、ぱああっ、と光が差したように、市川は感じていた。
「わたしは、田中絵里香としての記憶もあるんですよ! それで、あなたがたの相談を盗み聞きして、すべて納得しました。あなたがた、アニメのスタッフなんですね! 平ちゃん……つまり、新庄さんに事情は聞きましたが、その時は判らなかったんです。でも、今は理解できます。あなたがたの設定で、この世界は変化します。となると、あなたがたは、神に等しい力を持つのではないでしょうか?」
吃驚仰天! 驚天動地! 奇怪痛快、奇天烈壮絶! 驚き桃の木、山椒の木だ!
エリカの指摘は、市川に新たな地平を啓いて見せてくれた!
「つ、つ、つまり、おれたちが……?」
エリカは静かに頷いた。
「そうです。あなたがたの設定次第で、ドーデン帝国も、バートル国も命運が決まります! ですから、あなたに是非とも頼みたいお願いがあるのです!」
「お、おれに……?」
市川は、もう「僕に」なんてお行儀のいい返事をする気も喪失していた。
エリカは何を言い出すつもりだろう?
「バートル国の設定も、して欲しいのです!」
エリカは身体を傾かせ、顔を市川に向け、近々と寄せてきた。ほんのりと甘い、エリカの香水が市川の鼻をくすぐる。